「郷に入れば郷に従え」の大切さ

前項に当てはまる“活動”をしてしまったのが、エリートビジネスマンだったKさんです。

Kさんは、退職を機に都心のマンションを息子に明け渡し、自分は生まれ育った郊外の町に引っ越しました。子供時代はあちこちに雑木林があり、近くを流れる小川には魚がたくさん泳いでいるようなのんびりしたところでしたが、現在はベッドタウンとして開発が進み、すっかり近代的な町へと変わっていました。

しかし、町には小学校の同級生もかなり残っていて、そのなかの何人かは地域のリーダーとして活躍していました。

Kさんは昔からガキ大将タイプで、常に人の上に立つ存在だったので、彼らに、

「K君も俺たちの仕事を手伝ってくれよ」
「そうだよ。Kなら頭は切れるし、何をやらせてもうまいからな」

と言われて、すっかりその気になったのでした。

しかし、最初の会合で大失敗を犯してしまいました。

お茶を飲みながらのんびりと進む議事に対して、

「みなさんは、『時は金なり』という言葉をご存じですね。ただ長いばかりの会議ほど無意味なものはありません。なんのビジョンも意見も持たずに会議に参加している人もいらっしゃるようですが、そういった方々は自分の時間を浪費しているだけでなく、相手の大切な時間さえも無駄遣いしていることを理解されているのでしょうか。

今日の会議はいったん中断し、次回までに簡単なレポートをまとめて各自発表するのはどうでしょう。そのほうが速やかに進むと思うのですが」

と発言してしまったのです。

指摘する高齢のビジネスマン
写真=iStock.com/Yuto photographer
※写真はイメージです

彼が言っていることはたしかに正論ではあります。ビジネスマンとしては当然の意見でしょう。

しかし、残念ながらKさんはすでにビジネスマンではありません。地域の中では駆け出しのシニアなのです。

頑張らずにのんびりやっていこうという空気が読めずに高飛車な態度を取ってしまったら、地域に溶け込むまでにかなりの時間を要するでしょう。一度「偉そうな奴」というレッテルを貼られると、なかなかはがれないものです。

では、Kさんはどうすればよかったのでしょう。

言うまでもなく、ここは「郷に入れば郷に従え」という名言どおりにすべきでした。

頼み事をするときに印象がよくなる頼み方

地域で生活していると、どうしても近隣の人に頼み事をせざるを得ない場面に遭遇します。そんなときは思いつきで動くのではなく、ベテランらしい知恵を働かせて頼むべきでしょう。

頼む側の言葉づかいひとつで、先方の思いは「しかたがない。やってあげよう」とか、「私がやらなかったら困るのだろう」、あるいは「なんで私がやらなければならないのだ」などと変わってきます。

頼み事をするときには鉄則があります。それが何かというと――。

「~していただけますか?」「~してもらえませんか?」という言い方にして、する・しないの判断は、あくまでも相手にゆだねることです。

「~してください」では、相手が無理強いされているように感じ、あまりいい気はしないでしょう。

また、他人に手伝ってもらいたい場合は、

「申し訳ないけれど、時間があったら手伝ってもらえませんか?」
「お忙しいでしょうが、手伝ってほしいことがあって……。お願いできますか?」

などと話すといいでしょう。

まず、「申し訳ないけれど」「時間があったら」「お忙しいでしょうが」などと言って、相手の都合を気遣うようにします。

「~してもらえると助かるのですが」という話し方もあります。やや消極的な頼み方のようですが、押しつけられるような言い方を嫌う人に対しては、これくらいのほうがいいかもしれません。

「○○を手伝ってもらえませんか?」
「○○を助けてほしい」

などと、してもらいたいことを具体的に伝える言い回しも有効でしょう。

そして、「しかたない」と、嫌々でも依頼を引き受けてもらえたら、

「ありがとう。本当に助かりました」
「やっぱり頼んでよかったわ。本当にありがとう」

などと、きちんとお礼を言葉にします。心からの感謝の言葉を添えれば、相手は気分がよくなるはずです。