「組織全体」のマイナスを考える

「これを聞くべきか?」と考える必要はありません。「迷った」という事実が発生した瞬間に質問することが「正義」だと定義されたからです。

「迷っている時間が無駄だし、それ自体が会社にとってマイナスなんだ」

このフィロソフィーが浸透しているため、キーエンスの営業所では常に質問と回答が高速で飛び交っています。

「すみません、この商談のネクストアクションについてなのですが……」
「それはAだ。なぜならBだから。次!」
「ありがとうございます!」

この圧倒的な回転数。1秒でも悩む時間があれば答えを知っている人間に聞いて、早く顧客のために動く。

本書で「顧客目線」の重要性を説きましたが、社内のコミュニケーションにおいても変なプライドや遠慮を捨て、最短距離で正解に辿り着くことこそが、組織全体としての「正義」なのです。

「上司が忙しそう」→報告は待つべきか

「私が忙しいかどうかは、あさひさんは判断しなくていいです。時間を優先して聞いてください。私たちの目的は会社の売上を最大化することです」

そして最後にご紹介するのが、私の仕事観を決定づけたあまりにも合理的で、清々しいほどプロフェッショナルなこの言葉です。

あるとき私は緊急で決裁が必要な案件を抱えていましたが、上司のカレンダーは会議で埋め尽くされていました。「会議が終わってからにしよう」と待っていた私に、あとからそのことを知った上司が静かに、しかし力強く放った言葉です。

「私が忙しいかどうかは、あさひさんは判断しなくていいです」

ガツンと頭を殴られた気がしました。私は上司に気を使うことを仕事だと勘違いしていたのです。それは間違いでした。それは「社内向きの仕事ごっこ」に過ぎません。

上司は続けました。

「私たちの目的は会社の売上を最大化することです」

ここには、一点の曇りもありません。

私の役割:売上を作ること
上司の役割:部下が売上を作るための障害を取り除くこと

もし私の案件が売上に繋がるなら、上司の会議を中断させてでも承認を得ることが、組織として「正しい」行動なのです。