夢にも思わなかった中国とインドの接近
例えば、日本が提唱してトランプ大統領が興味を示し、バイデン政権にも引き継がれた「自由で開かれたインド太平洋構想(FOIP)」は、今も日本の外交方針の大きな軸となっている。
インドは、2020年に中印両軍が国境で激突したことをきっかけに「中国の不俱戴天の敵」と呼ばれるほど中国との対立を悪化させてきた。事実、中印は両国を結ぶ直行便さえなくしてしまったのだ。
2022年には、「中国包囲網」の枠組みとも呼ばれた日米豪印4カ国の「クアッド(QUAD)」のメンバーとしてモディ首相が東京での首脳会議にも出席。BRICSやSCOで習近平主席と同じテーブルに着いても、決して両首脳が会談することはなかった。
ところが、そのインドも2024年の総選挙前後に、にわかに中国へ秋波を送り始める。注目されたのは、米誌「Newsweek」(同年4月10日付)のモディ首相インタビューだ(Exclusive Interview: Narendra Modi and the Unstoppable Rise of India)。
記事の中でモディ首相は、〈インドにとって、中国との関係は重要かつ必須だ。(中略)私は、外交・軍事レベルでの積極的かつ建設的な2国間の関与を通じて、両国の国境の平和と平穏を回復し、維持できることを期待し、信じている〉と語り、世界を驚かせた。
インドのこの発言に中国も素早く反応。両国は歩み寄り、最終的に5年の時を経て再び握手を交わしたのである。
実はこの両者の動きの裏にも、前述したオーストラリア、カナダ、イギリスなどと同じく、中国と対立することのデメリットについての「学び」が存在している。中国封じ込めを狙いインドに期待していた日米にとっては、ダメージの大きい中印接近だった。
「法の支配」を無視するアメリカ
日本にとってさらに頭が痛い問題は、トランプ政権が戦後の国際秩序を公然と無視し始めたことだ。
日本がアメリカとの紐帯を強調し、中国を排除するためにしばしば用いてきたのは、「法の支配」という言葉だった。ところが、周知のようにトランプ2.0では、ベネズエラに軍事作戦を発動して大統領夫妻を拉致し、グリーンランドの領有のために武力を使う可能性を示唆。カナダを「51番目の州」と呼んで一国の首相を知事と侮辱する言動をしたかと思えば、イランの政権転覆のために圧倒的な戦力を投じて武力攻撃を繰り返している。
そんなアメリカ政府・軍の横暴ぶりを目の当たりにするに至り、中国を「法の支配」で批判する根拠も失ってしまったように見える。
決定打となったのは、トランプ大統領自身による国際法の真っ向否定発言だ。衝撃のインタビューは米紙「ニューヨーク・タイムズ」(Trump Lays Out a Vision of Power Restrained Only by ʻMy Own Moralityʼ)に掲載された(2026年1月8日付)。
「自分の行動を抑制できるのは?」と問われた大統領は「私自身の道徳観。私自身の心。私を止めることができるのはそれだけだ」と断じたのだ。
アメリカは、こんな大統領の下で軍事行動を起こしているのだ。

