MLBドジャース投手のDVの場合

今回の事件が、もしアメリカの野球界で起きていたらどうなっていたのだろうか。伊藤氏によると、アメリカでは「メジャーリーグベースボール」(MLB)が選手会と協力して、コンプライアンスのポリシーを確立、違反した選手らにペナルティを課す。対象となった選手らの言い分も聞いた上で、事実確認の調査をして最終処分を下す形だ。

最近の例だと、MLBと選手会が定めた「DV・性暴力・児童虐待ジョイント・ポリシー」違反で、2023年にDV容疑で逮捕されたドジャースのフリオ・ウリアス投手が調査対象となって処分を受け、以後試合に出場できていない。

ジョイント・ポリシーでは、選手の処遇や治療・教育など更生の道筋を示すだけでなく、被害を受けた家族に対しても、カウンセラーが24時間対応する「ヘルプライン」の提供や、地域の医療専門家の紹介などの支援が重要項目として明記されている。

ロサンゼルスのドジャー・スタジアム
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日本の野球界に自浄機能はあるか

「日本の場合、危機管理というとすぐ辞任で終わってしまうが、デュープロセス(適正な手続き)の観点でみると疑問が残る」と伊藤氏は指摘する。日本の野球界では、労働組合の結成など選手の権利を主張する面では、アメリカの選手会にならってきた。「しかし選手らによる人権侵害が起きた時の取り組みの面では不十分。野球界全体で人権尊重の考えが十分浸透していないことが、今回の事件で表面化しているのではないか」と話す。

「いまだに『巨人の星』(野球漫画・アニメ)で検索をかけると、父親の星一徹が息子の飛雄馬を殴るところが名場面として出てくる状況。体罰をして特訓したからこそ名選手が生まれたかのようなマインドセットが昭和の時代にあった」と伊藤氏は指摘する。「暴力があっても分かり合える、最後は『親心』が理解され、親子は和解し子どもは親に感謝する、といった考えがずっと続いてきている。野球は特に、鍛えることと体罰がかなり近接したまま今日に至っている印象だ」という。