開発業者に向けられた怒り

約束されたはずの設備が消えていく一方で、住民が日々支払う管理費は、どこへ流れていたのか。4月の施工不良の訴訟とは別に、今年1月には同物件を巡り、詐欺・自己取引の訴訟が起きている。その訴状は、管理費が開発業者ジャーマン・コトー氏自身と、その親族や関係者が経営する企業群に流れていたと主張する。

マイアミデイド郡巡回裁判所に提出された訴状の被告には、コトー氏本人だけでなく、同氏や関係者が支配するLLC(有限責任会社)10社、そしてコトー氏の母親グロリア・ガルシア氏を含む個人7名までが名を連ねた。組合側は500万ドル(約8億円)超の損害賠償と、建物の財務状況の全面的な開示を求めている。

ここまで露骨な手口が通用した背景には、管理組合の理事会の顔ぶれが関係している。アメリカの高級コンドミニアムでは通常、住戸の大半が売れるまで、開発業者が組合の理事会を運営する。しかるべき時期に住民側へ管理権を引き渡す、というのが慣行だ。

その移管前の段階で、理事長を務めていたのはコトー氏本人。副理事長にコトー・スーパーマーケッツ元幹部のギジェルモ・カカーニョ氏、会計兼書記にもコトー氏の別会社の社員マルセロ・スカリンチ氏が座っていた。リアルター・コムによれば、3人全員が開発業者の息のかかった人物だ。管理費の使い道を監督すべき理事会が、開発業者の支配下に置かれていたことになる。

組合代理人のヘイバー弁護士は、フロリダ州日刊紙のマイアミ・ヘラルドの取材に対し、「これほど傲慢で、これほど露骨に私腹を肥やした開発業者を、これまで見たことがない」と語っている。

マイアミの風景
マイアミの風景(写真=Baysidemarketplace/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

管理組合の怪しいカネの流れ

自己取引の具体例を、二つ見ていこう。

一つは、コトー氏が自身の関連会社が所有するビル内3階のユニットを、管理組合に賃貸していた件だ。米不動産専門ニュースのリアル・ディールが報じた訴状によれば、月額の賃料は8500ドル(約135万円)。ビル内には組合が無償で使えるオフィスが別にあったにもかかわらず、賃料は市場相場を大幅に上回り、賃貸面積も水増しされていた。新理事会がこの契約を打ち切るまでに、組合は約7万ドル(約1110万円)を支払っていた。

もう一つは、警備会社への大型契約だ。コトー氏に近いポロ一族が経営する同社には、警備業務の実績は一切なく、会社のウェブサイトすら存在しなかった。それでも、約80万ドル(約1億2700万円)が支払われていたと、リアル・ディールは伝えている。

このほかにも、月額3万4334ドル(約547万円)のコンシェルジュ契約や、競争入札なしに決定された清掃契約など、関連企業のネットワーク全体で計6件もの業務委託契約が結ばれていた。

訴状はさらに、別の大きな疑惑に言及している。管理権を住民側に引き渡す段階で、開発業者は本来、包括的な財務・会計情報を組合に提供することが求められる。

だがコトー氏側はそれらを提供しなかったうえに、組合に引き渡すべきコンピューターのデータまで消去したと、マイアミ・ヘラルドの取材でヘイバー弁護士は指摘している。