介護離職したのに2年で破綻

③ 離職して親の介護に専念する

親などの介護を理由に仕事を辞める「介護離職」は、おおよそ年間10万人ほど。介護の専門職の人たちは「離職をすれば、あなたの生活が困ることになる」と、とどめようとすることが多いが、子どもは「自分がやるしかない」と抱え込むケースがある。

「サービス利用や施設入居を拒否する親が多いです。すると、介護のお鉢は子にまわってきます。

1~2年なら頑張れるのかもしれませんが、介護期間は長期に渡ります。その間に、介護を行う子どもが健康を害したり、介護離職に至ったりで、親子ともども経済的に困窮してしまうケースもあります。なかには、『長男の責任』と自ら引き受ける人もいますが、これも思うようにはなかなか進みません」

太田差惠子さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
太田差惠子さん

実例3 ひとりで抱え込み、介護うつ状態に

40代のHさんは真面目な性格で、親思いの人だった。『母親を施設に入れるのは可哀想だ』と早期退職して実家に戻り、介護を始めたそう。『資格を取って実家で仕事をする』つもりだったが、田舎にそんな仕事はほとんどない。そもそも認知症の母親をひとりで介護をしていれば、時間や体力にそんな余裕はない。

想像を絶する大変な介護をひとりで抱え込んだ結果、ひどいうつ状態になってしまったという。2年で介護どころではなくなった。ところが、介護を継続できる状態ではないのに、それでも母親を施設に入れようとはしなかった。ケアマネジャーが役所に「介護困難」と通報したため、役所の措置という形で母親は特養に入れられることになった。

「子のやさしさ」がうまく回るケース

「Hさんとは、母親が施設で亡くなった後にも会いましたが、Hさんは当時を振り返り、『自分でもあんなことになるとは思ってもいなかった』と言っていました。自分は大丈夫と思っていても、陥ってしまうのが介護うつなんです」

頭を抱えた男
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです

3つの「過ち」と書いたが、すべては親のためを思う子の優しさや責任感から生じているため、責めることはできない。ただ、今一度、確認しておいてほしい。予想以上に長期戦となりがちな親の介護を家族だけで担うのは限界があるということを。

太田さんは、介護についてこう説く。

「介護にまつわる情報を知っていることは、強みになります。親のためと思うなら、情で動くのではなく知識と情報を入手して、自分の生活を守る。知識をうまく活用できたケースもご紹介しましょう」

実例4 世帯分離で高額な医療費の負担を軽減できた

50代のKさんは独身で、80代の母親と同居していた。母が入院し、治療費が想像以上に高いことに驚いたという。病院に所属する医療ソーシャルワーカーに相談したところ、“世帯分離”という方法を教えてもらうことができた。同居であっても、生計が別なら世帯を分けることができる。世帯分離することで、母親は住民税非課税の1人世帯となり、医療費負担は大幅に軽減された。