スーパー業界を襲う「インフレ」
こうして食品スーパーの実質的な王者となったライフではあるが、これから現在のポジションを守っていくことは簡単ではなさそうだ。長く続いたデフレ時代が終わり、インフレへと事業環境が転換したことで、スーパー業界の基本構造は劇的に変わろうとしているからだ。
日本のスーパーの生鮮品や惣菜は、これまで鮮度を重視する消費者への対応から、店内バックヤードで小分け、パック詰め、惣菜製造などを行ってきた。それは集中作業を分散する非効率な工程だったのだが、デフレ期には非正規労働力(パート、アルバイト)によって人件費を抑えることができたため、労働集約的な工程を組んでもなんとか成立していた。
しかし、ご存じの通り、人手不足、人件費高騰でそうした工程を維持することはもうできなくなってきた。そのため、業界大手各社は集中加工センター、セントラルキッチンへの投資で、店舗人員を削減してコストダウンし、規模の利益をフル活用することで一気に勝負をかける戦いが始まっている。そして、イオンの「まいばすけっと」といったバックヤードを持たないコンビニ型のミニスーパーが、消費者に受け入れられることを検証した。
各小売大手の大都市圏強化戦略
それでなくとも、食品需要は人口動態と密接な関係があるため、小売り大手は人口減少する地方から少しずつ手を引いて、3大都市圏に事業基盤を移していこうとしている。
イオンのまいばすけっとが約3000億円企業に成長できたことから、小型スーパーによる大都市圏進出、そうした競争激化を背景としたM&Aによる大都市圏強化を狙い、大手各社の動きが激しくなってきたのだ。それは大都市圏に事業基盤を築いてきたライフへのライバルの挑戦状を意味している。
わかりやすい例を言えば、トライアルによる西友買収は、西友店舗を拠点とした小型サテライト店展開による首都圏中心部攻略作戦である。少し前から始まった首都圏のディスカウントスーパー、オーケーの関西進出は着々と進行し、大阪と兵庫で既に11店舗があり(2026年5月末時点)、これからどんどん増やすと宣言している。それでなくてもオーケーは、首都圏売上でもライフをだいぶ前に追い抜き、その差を拡げつつある宿敵である(図表3)。

