「敵は○○だ」という単純な話ではない

【田中】そうした状況に便乗して、「あそこに悪い奴がいる、そいつのせいだ」と一方的に名指しして不満や不足を利用する人たちが、政治・経済・社会のあらゆるところで出没するようになっています。

ビジネス街を歩く人々
写真=iStock.com/Bim
※写真はイメージです

税金のせい、外国人のせい、デジタル化のせい、いまの政権のせい……。おそらくそんな単純な話ではありませんし、敵を特定して罪を被せれば済むわけでもない。自分の人生がうまくいっていようがうまくいってなかろうが、自分のいまの在り方が、どこから来てどうなっていくのか、だれも説明がつかなくなっています。空気のような「システム」や「アルゴリズム」に支配されていて、実体がないから反逆もできない。

自分の人生がなかなかうまくいかないとき、原因が自分の努力で解決できるようなところにあればいいけれど、いまは社会のシステム上の問題と絡んでいることも多い。自責ばかりせず、「あなたは気がついていないけれど、こういうシステムの中にいるからあなたは苦労しているんですよ」ということを言ってもらえたら、ホッとするんじゃないでしょうか。そうやってホッとすることが正しいのかどうかもわからないのですが。