インドのモディ首相も動いた
すでに多く報じられているように、ナフサ不足は、食品、医療、住宅建設やリフォーム、自動車など、広範囲にマイナスの影響を与えている。ナフサを原料とするモノの供給が減少すると、それだけ需要は発現しなくなる。景気減速の可能性が高まることも想定される。
また、ナフサの供給減少で、モノやサービスの価格も上昇するだろう。状況によっては、円安の進行で大手企業でさえ海外企業にナフサを買い負ける展開もありうる。
その場合、5月下旬の時点よりも、ナフサの不足は深刻化するだろう。ナフサショックは、日用品の入手しづらさ、医療サービスの供給不安にとどまらず、わたしたちの雇用・所得環境を含めた生活環境全般に悪影響をもたらすと懸念される。
海外では、政府がそうした懸念を、国民に明確に伝えるケースが増えている。インドでは、モディ首相が危機感を表明した。モディ氏はガソリンやディーゼルの消費削減、金購入の抑制、海外旅行の延期、テレワークの奨励、食料油の使用削減などを国民に呼びかけた。5月20日には、通貨防衛のためにインドネシア中銀が0.50ポイントの予想外の利上げを実施した。
「ナフサショック」はこれからが本番
一方、わが国政府は、国民に対して楽観的なコメントに終始しているように見える。そうした姿勢は、国民に安心感を与える意味では重要だろう。しかし、政府のリスク管理の面から考えると、やや楽観的過ぎるとの指摘もある。首相は、国民に節約を呼びかける考えを示さなかった。
現在の状況が予想以上に続くことになると、ナフサの不足、価格上昇により、わが国のインフレ懸念は追加的に高まるだろう。それは、長期金利が一段と上昇する要因にもなる。金利上昇は企業の資金調達コスト、家計の住宅ローン金利支払いの増加につながる。それに伴い、個人消費や設備投資の下振れは高まるだろう。金利上昇は株価にもマイナスだ。
ナフサショックは小売りなど一部の業種にとどまらず、わたしたちの生活環境の悪化につながると考えたほうがよい。私たち自身のリスク管理の視点が必要になる可能性がある。“転ばぬ先の杖”の例えもある。


