国内の石油備蓄量はおよそ「200日分」
そうした状況下、国内の関連業界では調達先の多様化が急務になっている。5月、米国など、中東以外からの調達量が通常月の3倍以上に増えるとみられる。それに加えて、国内の石油備蓄も、ナフサの供給回復の材料になるだろう。資源エネルギー庁によると、5月24日時点での石油備蓄量は203日分だった。
また、イラン戦争発生後のナフサの不足に関しては、生産設備の定期修理の影響もある。修理を終えた設備が再稼働することで、ナフサの供給量は一時的に持ち直しに向かうだろう。そうした取り組みは、一時的に、ナフサ不足の影響緩和につながる可能性がある。
ただ、効果の持続性には懸念も残る。国内の石油備蓄が残っている間に、イラン戦争が本格的な停戦に至ればよいが、どうなるかは読みづらい。
価格に転嫁しきれず、打撃を受ける企業
むしろ、国内企業の対応を見ると、中東以外の国や地域からナフサの代替調達経路を確保したうえで、前倒しで価格転嫁を行う事業者が出始めた。自動車タイヤなどに使う合成ゴム市場では、5〜7月の大口価格が、2〜4月に比べ5割高になったと報じられた。
当面、ナフサなどの供給は制約された状況が続き、価格には押し上げ圧力がかかると予想される。そうした見通しに基づき、今から段階的に値上げを行い、収益を確保しようとする川上の事業者は増えるかもしれない。
調達価格が上昇する一方、消費者向けの価格の引き上げペースは、対企業(B2B)の取引価格の上昇ペースを下回る傾向にある。ナフサの価格上昇、あるいは高止まりにより、事業者の調達価格が、販売価格を上回る(逆ザヤ発生の)恐れは高まっている。それは、企業の業績悪化要因だ。
特に、中小の石油化学品メーカー、卸売業者などで販売が減少して資金繰りは悪化し、事業の継続が難しくなるケースが増加すると懸念される。人手不足、円安によるコスト増に加え、ナフサ不足も企業の倒産要因の一つになる恐れは高い。

