「重たい割れ物」をわざわざ店で買う理由

地元の企業や事業者とスクラムを組みながら事業展開していこうと決めたのです。2022年に出雲大社に店を出し、その後、増やしています。地域にリアル店舗を出したことで、今は多くのメリットを感じています。リアル店舗の存在があることで、ショップ機能だけでなく、地域におけるコミュニティにもなっています。

店舗を中心に行政や地元のキーパーソンなどとのつながりができました。地域でのネットワークが広がっている。地域とつながる感覚は、都会で打ち合わせするだけでは決して得られないと思いました。今後も出店していきます。今では各地の行政や事業者の方から出店以外の相談を受けるようになりました」

ビームス ジャパン 太宰府で売れる信楽焼の狸や招き猫はオンラインでも買うことができる。しかし、リアル店舗で買う人のほうがはるかに多い。人はなぜ、重たいものをわざわざ店舗で買うのか。オンラインでいいじゃないか、と一瞬は考える。しかし、そうではない。今の時代、売れるモノとはコンテクスト(文脈)に応じた商品だ。

買う人にとっては飛行機に乗って大宰府まで出かけるというコンテクストが商品に価値を与えている。出かけていった自分の思い出が信楽焼の狸に追加されているから価値が生じる。自宅でポチっとしても、そこに思い出は付加されない。

オンラインで買っても、思い出は増えない
筆者撮影
オンラインで買っても、思い出は増えない。「ビームス ジャパン 太宰府」は、旅先で手に取るからこそ商品に価値が生まれることがわかる象徴的な例だ

マーケティングで売れる時代は終わった

優秀なキュレーターが展覧会を開く時、まっさきに考えるのはコンテクスト(文脈)だ。

美術品を出品するに際して、適当に並べるのではない。どういう順番で陳列すれば観客がより理解できるかを考える。また、さらに優秀なキュレーターなら美術館へのアプローチもくふうする。美術館の入り口に至る取り付け道路にも美術展のバナーのようなプロモーションツールを用意する。アートに触れる前に観客の気分が高まるような仕掛けをちゃんと考える。そうすれば観客は満足する。美術展を見た後、ミュージアムショップで図録、絵葉書、グッズを買ってくれる。大切なのは商品に至る道を作るコンテクスト(文脈)だ。

ビームスが全国に展開しようとしているゲートストアは寺社、観光地とのコラボレーションだ。買い物客の第一の目的は寺社の拝観であり、観光だ。彼らは目的を終えて初めて参道にある店をのぞく。どこで買うかと言えば、もっともコンテクストに沿った店を選ぶ。

これからモノを売ろうとする人たちが考えなくてはならないのはマーケティングよりもむしろコンテクストだ。人は文脈に沿って観光し、モノを買う。

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