「どこにでも売っているお土産」を変えたかった
日本の寺社、観光地には土産物店が欠かせない。だが、9割以上の土産物店は従来からの品ぞろえを踏襲していると思われる。
従来品とは次の通りだ。寺社や観光地の名称が入ったTシャツやキーホルダー、木彫りの置物、木刀・模造刀、ペナント、絵葉書、温泉タオル、こけし、だるま、招き猫、竹とんぼ、けん玉……。土産物として作られた既製の品物を集めてきて、それを陳列して売っている。並んでいる土産物のなかには地元の業者が製造したものもあるだろうが、多くは地域外で大量生産されたものではないか。
従来型の土産物店には多数の雑多な商品があった。だが、いずれもどこの土産物店でも置いているものであり、その店だけにある商品はほぼなかった。
ビームス ジャパンはそうした従来型の土産物店の風景を変えた。日本の銘品と地域の伝統工芸品をブラッシュアップし、ビームスのテイストを加えた。しかも、商品はビームス ジャパンの店にしか置いていないものばかりだ。国内外から寺社、観光地を訪れる客にとっては新鮮な商品と受け止められたのである。
このプロジェクトは全国の寺社や観光地にとってもありがたい話だったろう。従来型の土産物だけでは観光客、インバウンド客を引き付けることができないことは彼らもわかっていたからだ。絶妙のタイミングというべきか、寺社、観光地とビームスはちょうどいい時期に出会った。
「すばらしいシルクですね」英国での衝撃の出合い
同プロジェクトを推進してきたビームスクリエイティブ事業開発2部の鈴木春幸部長はこう説明する。
「もともとビームス ジャパンのプロジェクトを始めたきっかけはうちの社長でした。当社の社長、設楽(洋)がロンドンのサヴィル・ロウにある老舗名門テーラーに行った時の話です。設楽が100年以上前のシャツのスワッチ(生地見本)を見て感心し、『すばらしいシルクですね』と伝えたら、店舗の従業員から『お客さま、このシルクは日本の着物の素材です』と教えられました。
ビームスはアメリカ、イギリス、イタリアなど海外のファッションやカルチャーを日本に紹介してきたのですが、実は日本国内にいいものがたくさんあるとわかりました。
社長の体験から、これまで海外に向けてきた視点を国内に向けるためにできたのがビームス ジャパンです。多くの日本人が気づいていない、あるいは忘れてきた伝統や文化に光を当て、その魅力を発掘するプロジェクトをやることにしたのです。当初、新宿、渋谷、京都などの都市に店を出したのですが、都会から発信するのではなく、もっと地域に入り込んでみようと思うようになりました。


