23歳で妻子を置いて単身渡米

親の愛を知らずに育った太一郎は、やがて身長6尺(約181センチ)の大男に成長する。「相撲取りにならないか」と本気でスカウトされるほどの立派な体格だった。焼き物問屋を営む伯父の世話になり、10代からこんにゃくや野菜の行商で小銭を稼ぐうちに商売の面白さに目覚める。

伯父からは「不正直な品を売るな」「適正と信じた価格は絶対に下げるな」「急がず10年を一期として働け」という商人のイロハを徹底的に叩き込まれた。この教訓はのちに森永の骨格となる。

太一郎という男はとにかく性格が極端で「直情径行」だった。これが長所でもあり短所だった。「物事に熱中する代わりに、こうと信じたら貫徹しようとする」――つまり、熱中したら最後まで貫かずにはいられない性分――と自身で自己分析しているように、ブレーキの壊れたダンプカーのようなところがあった。