日本の若手従業員は帰属意識が低い
会社や仕事に冷淡な人が増加していることや、「JTC」への不満が強まっていることを企業も認識していないわけではない。「大卒新社会人の3割が3年以内に離職する」といった若年離職の問題は筆者が学生の頃(2000年代後半)にもよく指摘されていたが、転職市場が厚みを増す中で最近は各企業で主力となる中堅クラス(30代〜40代前半)の離職(転職)が増加していることもあって、人材流出に関する企業の危機感が一段と高まっていることは確かだろう。
こうした流れの中で、いわゆる「エンゲージメント」(従業員の自社に対する帰属意識・信頼感・愛着)の向上に向けた取り組みが多くの企業で進められている。差し当たり、従業員に対するアンケート調査を実施し、従業員が会社に対して何を感じているかのデータを集めている企業が多いようだ。従業員が何に満足し、何に不満を持っているかを知ろうともしていなかった時代と比べれば一歩前進ではあるだろうが、そうしたデータ収集が有効な施策の立案・実施につながっているかというと、少なくとも現時点では、それほどうまくいっていないようである。
そもそも日本企業の従業員のエンゲージメントの低さは有名である(だからこそ、どの企業もエンゲージメント改善に向けた取り組みを進めているということでもある)。ギャラップの調査「State of the Global Workplace」の最新版(2025年版)をみると、日本のエンゲージメントスコアは7%と世界平均(21%)を大きく下回り、世界最低レベルの状況が続いている。
「エンゲージメント」を高める方法とは
「エンゲージメント」という言葉・概念は数年前から流行しており、前述の通り多くの企業で取り組みが進められてきたことを踏まえると、やはり多くの企業においてはエンゲージメント向上の取り組みはあまりうまくいっていないと評価せざるを得ないだろう。
それも当然と言えば当然で、エンゲージメント向上のためには従業員にとってプラスなこと、従業員が望むことをする必要があるわけだが、従業員にとってプラスなことは経営者にとってはマイナスというゼロサム性が相当ある(賃上げはその典型である)。当たり前の話だが、経営者は自分の取り分を減らしてまで従業員に何かしてあげようとは通常思わない。したがって、経営者と労働者のパワーバランスに大きな変化が生じない限りは、エンゲージメント向上に向けた実効性のある対策は打たれないのが必然である。
このように世代間の価値観ギャップが拡大し、老いも若きも企業への不満を募らせる中で、筆者世代のビジネスパーソンは両者(中高年層〈経営層〉と若年層〈労働組合員層〉)を取り持つような役回りになっていることが多い。「会社と自分を一心同体のものと考える中高年層」と「会社への帰属意識が薄い若年層」の板挟みにあって強いストレスを感じていることが、他の年齢層に比べて高いFIRE願望を持つことにつながっている面があるのかもしれない。
