なぜ、このような違いが生じるのであろうか。それは各学歴層の人々がお互いに対して持っている偏見によるところが大きいように推測される。A層からは低学歴層に対して「他力本願」「子どもにDQN(不良、低脳などの意)ネームをつけるのは低学歴」など露骨な偏見が垣間見られたが、逆にD層から見ると高学歴層に対して「プライドが高い」「人を見下す」などの評価が目立つ。高学歴者が収入の高さ以上に、学歴の高さと人間性の良さを絡めて捉えているのに対し、低学歴層はそのような高学歴層の考え方そのものが鼻につくようだ。
この点に関して、婚活中の娘を持つ高学歴主婦のHさんの意見は率直だ。
「娘の相手には、学歴や収入などあまり多くを望まないようにしている。結婚してくれることが第一だと思うので。ただし、多くのカップルを見てきたけれど、相手を選ぶポイントは地頭の良さ。そういう人は成功する可能性が高いと思う」とわが子の結婚相手を厳しく査定している。
子どもには、いずれ独立して起業家として活躍してほしい親もいる。
「勤めるのは奴隷と一緒。自分の人生の時間を切り売りしているわけだから」
このような意見を持つ人は、高学歴層の親に散見され、自分の子どもに圧倒的な自信を持っていることを窺わせる発言だ。誰しも自分の子どもには過大な期待を持ってしまうもの。世界を股にかけて活躍するわが子の将来の姿を夢想することは、子を持つ親に与えられた特権である。
しかし、現実的にわが子の就職先として望まれているものは断トツで「お役所」だ。「公務員」はA層からD層まですべての階層で圧倒的な人気で1位を誇る。「不況に強い」「安定している」「公務員ほどおいしい仕事はない」など、コメントは厳しい経済環境を勘案した親の心配を感じさせる。どれほど隆盛を誇る企業であったとしても、民間企業である以上、何らかの拍子に経営が傾いてリストラされるかもしれない、そんな社会的な恐怖心の裏返しのような調査結果だ。ちなみに、学歴別の特徴としては、特にD層の中で親の学歴が中卒・高卒の場合では、同じ公務員であったとしても「市役所」と回答する割合が極めて高かった。