カシオが見つけた新たな「柱」

モフリンは介護領域での活用にも期待が高まっている。2026年1月からは福岡市の認知症フレンドリーセンターでモフリンの展示が開始され、認知症の人への効果について検証が進められている。精神的な癒し効果を持つロボットは、高齢化が進む日本のみならず、海外も含めて大きな需要が見込まれている。

モフリンの「裏側」もモフモフで、まったくロボット感がない。
撮影=プレジデントオンライン編集部
モフリンの「裏側」もモフモフで、まったくロボット感がない。

かくいう筆者も、高齢の母へモフリンをプレゼントしようと検討した一人だ。かつて猫を2匹飼っていた動物好きの母だったが、認知症が進み世話ができなくなってしまった。しかし、孤独を募らせ、多い時は1日数回筆者に「寂しい」「つまらない」と電話してくるように。結局、その後施設入所が決まったこともあり購入には至らなかったものの、世話がいらず孤独を癒してくれるAIペットのニーズを図らずも実感することとなった。

さらに米国、英国でも販売を開始しており、グローバル展開も始まっている。社内でも「会社からの期待の高まりは感じている」と二村さんは明かす。

カシオが「感情のデジタル化」という新領域に踏み出した意味は、単なる製品多角化にとどまらない。人間の感性や「心に寄り添う体験」といった競争軸を、新たな価値として提示しようとする試みだ。

カシオの収益は好調ではあるが、その約6割をG-SHOCKなどの時計事業が占める。2025年2月にはかつての主力だった電子辞書事業の新モデル開発中止も発表した。次の柱をどこに見出すか――その模索のなかで芽吹いたのが、この小さな相棒である。

合理性だけでは測れない豊かさを提供するこのモフリンが、カシオの経営において、転換点となり得るのか。その答えは、日本の製造業の行く末を占う試金石となるかもしれない。

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