トランプ外交にとっての「最大の敵」

バイデン政権は、国際政治を「民主主義v.s.強権主義」という構図で捉えた。アメリカ、日本、欧州などの民主国家が連携し、中国やロシアのような強権国家に対抗する。これがバイデン外交の基本的な世界観だった。

トランプ大統領の外交スタンスは根本的にそれとは違う。トランプ大統領は、リベラルな国際秩序を守ることに関心がなく、EU、国際機関、グリーン政策、DEI(多様性・公平性・包括性)、人権外交のような「グローバル・リベラル秩序」に対して、むしろ強い反感を持っている。主眼はあくまで、アメリカ中心の勢力圏再編をいかにして実現するかにある。

トランプ大統領にとってEUは、「言うことを聞かない身内」のような存在だ。安全保障をアメリカに依存しながら、グリーン政策やデジタル規制、人権外交でアメリカに注文をつける「自分の価値観を一方的に押しつける厄介な存在」である。だからトランプ大統領はEUに対して強く出るし、NATOに対して懐疑的なのである。

中国とロシア、イランは明らかに違う

では、ロシアはどうか。ロシアは民主主義の外形を残した強権国家だが、ロシアにはキリスト教文明、反LGBTQ、反グローバリズム、反EU、反リベラルという「共通点」がある。そのため、トランプ大統領の保守的価値観には親和性が高い面がある。もちろんロシアは危険な軍事大国ではあるが、中国から引き離せるなら利用価値のある相手である。

さらに、イランはどうか。イランも選挙や大統領、議会の外形はある。だが、実態は最高指導者を中心とする神権的権威主義国家だ。また、反米・反イスラエルを体制の正統性に深く組み込んでいる。イスラムだから敵なのではない。反米・反イスラエルの革命体制だから、アメリカ中心の秩序に組み込めない「交渉不可能な敵」なのだ。

ロシアやイランと比べると、中国は別枠の存在である。中国は反リベラルではあるが、アメリカの産業や技術、軍事、サプライチェーン、金融、資源、安全保障圏を脅かす最大の競争相手である。

トランプ外交においてこの3国を乱暴に色分けすると、次のようになる。

「ロシア=寝返らせたい敵」
「イラン=抑え込むべき敵」
「中国=最大の競争相手(最後に対決する本丸)」

この整理をすれば、トランプ大統領の行動はかなり見えやすくなるはずだ。

中国、ロシア、イランの国旗と、アメリカの国旗
写真=iStock.com/wildpixel
※写真はイメージです