プーチンが戦争を止められない理由
この構図で見ると、ウクライナ戦争の意味も変わって見えてくる。
プーチン大統領は、NATO拡大を阻止するためにウクライナへ圧力をかけ、最終的には全面侵攻に踏み切った。しかし、その結果は逆効果だった。フィンランドやスウェーデンがNATOに加盟し、ウクライナの反ロ化は決定的に進んだ。欧州の再軍備も進み、NATOは新しい存在理由を得てしまった。プーチン氏はNATOを押し返そうとして、逆に自らの首を絞めたのだ。
それでも、ロシアは簡単には戦争を止められない。現状で停戦すれば、プーチン氏が掲げた大戦略の失敗が見えやすくなるからだ。
もちろん、ロシアはウクライナ領の一部を占領している。単純な領土だけを見れば、何も得ていないわけではない。しかし、当初の目的から見ればどうか。NATO拡大は止められず、ウクライナの反ロ化も止められず、併合を宣言した地域の全域支配もできていない。欧州はむしろ再軍備に向かった。
この状態で戦争を止めれば、プーチン氏は国内向けに「何のための戦争だったのか」を説明しなければならない。だから、プーチン氏は戦争を止めにくくなっている。戦争を続けている限り、「まだ目標達成の途中だ」と言えるからだ。
3カ国の中で優先順位を付けている
ここでトランプ大統領の出番になる。トランプ大統領がやろうとしているのは、プーチン氏を倒すことではない。プーチン氏が国内向けに「敗北ではない」と説明できる出口を作ることである。
これは道義的には非常に不快な話だ。ウクライナから見れば、侵略者に体面を与えることになる。しかし、戦争を止める現実策としては、プーチン氏が降りられる出口を作らなければならないという側面がある。トランプ大統領は、そこに豪腕で切り込もうとしているのだろう。
では、なぜ中国が後回しになるのか。理由は明確である。アメリカが、ロシア、イラン、中国の3国を同時に相手にするのは負担が大きすぎるからだ。
ウクライナ戦争が続けば、アメリカの軍事支援、ヨーロッパとの調整、対ロ制裁、エネルギー問題などが続く。中東でイラン紛争が続けば、イスラエルや湾岸諸国、原油価格、ホルムズ海峡に影響する。その状態で中国と全面的な経済戦争に入れば、アメリカ経済にも大きな負担がかかる。
トランプ大統領は、同時にすべての戦線を広げるタイプではない。むしろ、相手を順番に処理しようとする「ディール」外交を実践するトップである。

