飲酒・喫煙と同じくらい危ない「デスクワーク」
そして、日本人男性が日本酒に換算して1日2合以上飲み、タバコを吸うと、飲酒も喫煙もしない人とくらべて大腸がんの発症率が3倍になります。タバコの煙にはさまざまな発がん性物質が入っていて、煙に直接ふれることのない大腸の粘膜からも発がん性物質が検出されます。
男性は、年齢で調整した大腸がんの発症率と死亡率が、ともに女性の2倍高いことが知られており、直腸がんに限ると男女差はさらに広がります。飲酒、喫煙する人の割合が高いからでしょう。そのため専門家らは、日本人男性がはじめから飲酒も喫煙もしなければ、大腸がんの半数近くを予防できると試算しています。
飲酒、喫煙と同じく大腸がんを招くのが、机に向かう仕事、デスクワークです。なかでも結腸がんの発症率が上がります。オーストラリアの研究者らは、デスクワークを10年間続けた人は、デスクワークについたことがない人とくらべて、大腸がんに2倍なりやすいと述べています。
また、日本でおこなわれた研究で、立ち仕事の人はデスクワーク中心の人より大腸がんの発症率が70%以上低かったと報告しているものがあります。他に、日本人約6万5000人を対象とした大規模な調査によると、立つ、歩く、走る、重いものを持つ、激しいスポーツなど、すべてをひっくるめた身体活動が多い男性は、結腸がんの発症率が40%以上低くなりました(*6)。女性については、はっきりしたデータが得られていません。
大腸がんは現代病だ
大腸がんは、北海道、東北、山陰という、冬に雪が積もる地方で多い傾向があります。厚生労働省の「全国がん登録2020」によると、発症率が高い順に、秋田、青森、鳥取で、4位は車社会の沖縄でした。すべて年齢で調整したデータです。これも、体をあまり動かさない生活と大腸がん発生の関連を裏づける証拠の一つと言えます。
机に向かう時間が長いと結腸がんが増える原因については、肥満になりやすいこと、胆汁分泌の乱れ、免疫機能の低下などが考えられています。
日本で大腸がんの発症率が上がり始めた1960年代は、会社でデスクワークにつく人が増え、乗用車が普及した時期と一致します。これらは糖尿病増加の原因でもありました。先のデータで中国の発症率が低かったのは、運動量の違いによるのでしょうか。大腸がんは欧米病と言うより、現代病なのかもしれません。
(参考文献)
*1 お通じの頻度は大腸がんの発症率に関連しない
Otani T. et al., “Bowel Movement, State of Stool, and Subsequent Risk for Colorectal Cancer: The Japan Public Health Center–Based Prospective Study.”, Ann. Epidemiol., 16(12) (2006).
*2 大腸がんの発症率には人種差がある
Ollberding N. J. et al., “Racial/ethnic differences in colorectal cancer risk: the multiethnic cohort study.”, Int. J. Cancer, 129(8) (2011).
*3 脂質の過剰摂取は大腸がんの発生を促す
Ocvirk S. and O’Keefe S. J. D., “Dietary fat, bile acid metabolism and colorectal cancer.”, Semin. Cancer Biol., 73 (2021).
*4 魚の摂取で近位結腸がんの発症率が下がる
Sasazuki S. et al., “Intake of n-3 and n-6 polyunsaturated fatty acids and development of colorectal cancer by subsite: Japan Public Health Center–based prospective study.”, Int. J. Cancer, 129(7) (2011).
*5 男女ともに飲酒は大腸がんを招く
Mizoue T. et al., “Alcohol Drinking and Colorectal Cancer in Japanese: A Pooled Analysis of Results from Five Cohort Studies.”, Am. J. Epidemiol., 167(12) (2008).
*6 身体活動は日本人男性の大腸がんを遠ざける
Lee K.-J. et al., “Physical activity and risk of colorectal cancer in Japanese men and women: the Japan Public Health Center-based prospective Study.”, Cancer Causes Control, 18(2007).



