ハム・ソーセージなどの加工肉「発がん性がある」
入ってきた胆汁を大腸の悪玉菌が分解すると、発がんと関連する物質ができるのです。発がん性物質まではいきませんが、発がんを手助けする物質です(*3)。つまり、脂質を多く摂取して胆汁の分泌が増えれば増えるほど、大腸がんが発生しやすくなるということです。
「亜麻仁油、オリーブ油などの植物性油なら大丈夫」と言う人がいますが、これは間違い。どんな脂質も体内で分解される経路は同じなので、とりすぎれば大腸がんの発症率が上がります。
肉の摂取量と大腸がんの発症率の関係については日本でも調査が実施され、男性は鶏肉を含むすべての肉、女性は鶏肉をのぞく牛、豚、羊などの肉を多く食べると、どちらも結腸がんの発症率がおよそ1.5倍上がるというデータが得られています。
世界中で同様の研究結果が集まってきたことから、国際がん研究機関(IARC)は2015年に、赤肉は「おそらく発がん性がある」、ハム、ソーセージなどの加工肉は「発がん性がある」と発表しました。赤肉とはモモ肉、ヒレ肉などの脂の少ない肉のことではなく、牛、豚、羊、山羊、馬などの獣肉のことです。ただし、このくらいまでなら食べても問題ない、と線を引くことはできていません。
日本人の大腸がんは「食肉が理由ではない」可能性
そして、それ以上に問題を難しくしているのが、大腸がんの発生を促す要因が肉以外にもあることです。まず、図表4の上のグラフを見てください。これは2020年の、国民1人あたりの年間の食肉摂取量を国ごとにくらべたものです。日本で食の欧米化が進んでいますが、こうやって見ると日本人の肉の摂取量は欧米の足元にもおよびません。1位の米国の半分以下です。
では、各国の大腸がんの発症率はどうでしょう。それを示したのが下のグラフで、こちらは2019年に報告された調査結果です。驚いたことに、たいして肉を食べていない日本は世界5位。肉の摂取量が日本と大差ない中国や、それどころか、米国の2倍近く発症率が高いのです。
同じ東アジアの国で遺伝的素因が似ているはずの日本と中国で、大腸がん発症率がここまで違うとなると、肉の摂取以外の影響を考えるしかありません。欧米との差についても同様です。日本人は、欧州系米国人より大腸がんになりやすい遺伝的素因を持っていますが、それに加えて、米国は1970年代から大腸がん対策を続けてきました。政府主導のキャンペーンにより、牛肉に代わって豚肉、鶏肉、魚の消費が伸び、運動する習慣を持つ人が増え、大腸がんの発症率が順調に下がっています。生活習慣全体の変化が効果をあげているようです。

