魚を食べると発症率が4割下がる

肉とは対照的に、発がんを防ぐとしてよく取り上げられるのが野菜と果物です。しかしながら、日本でおこなわれた大規模な調査では、野菜をどれだけ食べても大腸がんの発症率はまったく変わりませんでした。

ただし、これは、野菜を食べても意味がないということではありません。日本で調査を実施した研究者らは、日本人は欧米人より野菜の摂取量が多いので、あまり食べていない人と、より多く食べている人を比較しても、発症率に差が見られなかったのではないかと述べています。

それなら魚はどうでしょう。魚には、悪玉LDLが増えても動脈硬化になりにくくするほどの威力があります。動脈硬化と同じく、欧米で多い大腸がんも防いでくれそうな気がしませんか?

はい、そのとおりです。動物実験や、実験室でおこなわれた研究から、魚に含まれるEPAとDHAが大腸がんを予防するという報告が寄せられています。日本でも詳しい調査がおこなわれ、魚からEPA、DHAを多く摂取しているグループは、結腸の入り口付近にできる大腸がんの発症率が40%下がることが明らかになりました(*4)。半分近くになるということです。

鬼門は「アルコール」か

いやいや、ちょっと待って。魚は少し増やすほうがよいにしても、食物繊維は足りている。肉は食べてはいるが欧米ほどじゃない。野菜も十分摂取できている。となると、なぜ日本で大腸がんが減らないのでしょうか?

大腸がんの大部分は、がん遺伝子の作用によって細胞が異常な増殖を開始して、さらに、がん抑制遺伝子が正常に働かなくなることで発生すると考えられています。ここまで早くて5年、たいていは10年から、ときには20年くらいかかります。そして、ほとんどの大腸がんで、多数のがん遺伝子とがん抑制遺伝子にエピジェネティクス変化が起きていることが観察されています。

とくに日本人に「悪いエピジェネティクス」を起こすと考えられているのが飲酒です。大規模なコホート研究から、日本酒に換算して1日2合以上飲む日本人男性は、まったく飲まない人とくらべて大腸がんに2倍なりやすいことがわかりました。男性も女性も、1日に飲む量が増えるにつれて大腸がんの発症率が上がります。この傾向は結腸がんでも直腸がんでも認められました(*5)

お猪口に注がれた日本酒で乾杯する人々
写真=iStock.com/liebre
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さらに、飲酒による影響は、欧米人より日本人のほうが深刻なことが確認されました。ここにも、日本人が遺伝的にアルコールに弱いことが関係していると考えられます。