冷静な人は「NT倍率」を確認している

5月7日、日経平均株価とTOPIXの比率である、NT倍率(日経平均株価÷TOPIX)は16倍を超えた。これは、長期の平均(約12.6倍)から大きく乖離している。先行き強気になった投資家が多いだけに、リスク要因について冷静に頭に入れておくことは重要だ。

現在、AIの成長について、やや期待先行気味の部分もある。世界最大の資金運用会社、米ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は、「AIバブルは存在しない。実際は逆で需給逼迫が起きている」と喝破した。

AIチップなどの成長期待は膨張し、“神話”のような強気論が市場を覆いつつある。たしかに、中長期的にAIの成長期待は高いが、毎年、AI関連企業の収益が倍増する状況が永久に続くとは考えにくい。株価上昇があまりに急である分、何かのきっかけで、相場が急速に調整することも想定される。

原油高だけではない、中東情勢の影響

世界的に建設事業が急増している。AIデータセンターの運営にも懸念がある。オラクルなど大手企業でさえ、データセンター投資の急増によって財務悪化懸念は高まっている。

プライベート・クレジットと呼ばれる、ノンバンク融資がデータセンター建設に多用された点も懸念材料の一つだ。融資が焦げ付くのではないかという懸念から、資金の引き出し増加に直面するファンドがあるようだ。

データセンターの収益化に、想定以上の時間がかかることも懸念される。その場合、プライベート・クレジット・ファンドの解約はさらに増えるだろう。それが、金融機関の業績悪化につながるリスクは軽視できない。

半導体の供給が、予定通りに進まないリスクもある。イラン戦争は、世界の半導体サプライチェーンにも潜在的な打撃になりうる。カタールの石油化学プラントが攻撃されたことで、半導体製造工程の冷却に使うヘリウムの供給は減少した。

特に、回路線幅10ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の先端チップで、ヘリウムの消費量は多いといわれている。代替も難しいようだ。エネルギー資源価格上昇による台湾などでの電力不足も、半導体供給の制約につながり、AIチップ供給が伸び悩み、成長期待が崩れる恐れもある。