対中関係では劣位のパートナーに
だが、ロシアがイラン戦争で得た利益は、原油価格の上昇や、米国による対ロ制裁緩和の結果であり、ロシア自身が紛争を仲介・抑止・主導して得た利益ではない。
イラン戦争以前、ロシアの輸出収入は大きく減少し、財政赤字は政治的に無視できない水準に達していた。その状況がイラン戦争によって、ロシアの石油税収は4月に約90億ドルへ倍増するだろうと、ロイターは試算している。
これは漁夫の利であり、世界的主導権の証明ではない。機会主義は影響力とは別物だ。
米国の政策変更によって利益を得る国は、国際情勢の主導者ではない。偶然利益を得たにすぎない。
そしてその「幸運」は容易に逆転しうる。
より大きな問題は、中国との関係でロシアがほとんど身動きがとれなくなっていることだ。
EU安全保障研究所は「顕著に偏った依存関係」により、ロシアは中国に「非対称の戦略的柔軟性」を握られていると指摘する。
中国は原油などの輸入コストが上がっても対策の立てようがあるが、ロシアは中国製品や市場への依存度が高い上に、経済制裁下では石油輸出収入を中国に頼っており、政策変更の余地が限られる。
中ロはもはや対等な「反西側同盟」ではなく、ロシアは中国に従属するパートナーだ。
この構図は、5月14〜15日に予定されるトランプの訪中でより明確になる可能性が高い。
北京にとって地政学的な最優先事項は、競合する大国である米国との安定した関係だ。
ロシアとの戦略的関係も重要だが、台湾、インド太平洋、世界貿易や投資といった核心的課題に直結する米国との関係に比べれば二次的なものに過ぎない。
最も重要な対外関係である中国に主導権を握られている限り、ロシアは大国の中核にあるとは言えない。
まだプーチンにできること
それでもプーチンにカードが残っていないわけではない。
ロシアはサイバー攻撃、政治介入、経済的圧力、核の威嚇などを通じて、NATO同盟国へのハイブリッド圧力を強めることができる。
ウクライナで攻勢を強めることもできる。ウクライナ和平をめぐる外交は停滞しており、オレシュニクのような新型極超音速兵器の使用頻度を高めて新たな攻勢に出ることも考えられる。
イラン戦争が長引く間は、密かにイランに対する支援を拡大し、米国の負担を増やす可能性もあるが、その場合、ウクライナやトランプ政権との関係改善を失うリスクがある。
これらは他国にとって深刻な脅威だが、いずれも妨害者の戦術であり、外交の議題を設定したり、圧倒的な力で望ましい変化を実現する国家の行動ではない。
イラン危機は、クレムリンが長年覆い隠してきた現実を明らかにした。ロシアは混乱を引き起こし、利益を得て、威圧し、長期化させることはできる。だが、相手を力で従わせることは次第にできなくなっている。
ウクライナに軍事資源を縛られ、石油価格の変動や米国の政策に依存し、中国との関係では劣位に立ち、欧州のエネルギー市場からも排除されつつあるロシアの国家としての実像は、ますます明瞭になっている。
プーチンは依然としてカードを持つ。しかしそれは、ゲームを支配する力ではなく、ブラフに頼る弱い手札にすぎない。


