中東で最後の同盟国イランが窮地に陥っても動けない――ウクライナに軍事資源を拘束され、影響力の低下が鮮明になっている
ロシアとイランの国旗
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イラン戦争では存在感のなさが目立つ。時折姿を見せても、ほとんど影響力を持たない――ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。

これはプーチン政権下におけるロシアの影響力の現状を静かに物語っている。クレムリンの一部強硬派が振りかざす言説とは対照的だ。

イランはプーチンのロシアについての一つの現実を浮き彫りにしつつある。クレムリンがいかに強気な姿勢に出ようとも、ロシアはいまや二流の大国であり、国際情勢を形作る側ではなく、情勢に左右される側にある。

クレムリンは、自らを多極世界の一極だと売り込んでいる。特にイランのようなBRICS諸国に対して、その影響力は揺るぎないと思っている。

しかしイラン危機は、ロシアが依然として危険な存在でありながら、世界の重要な交渉や合意形成の場では次第に不在になりつつあることを思い出させる。

プーチンの特使を務めるキリル・ドミトリエフは、米国との関係再構築やウクライナ戦争終結に向けた協議に関わる一方で、西欧諸国を挑発することを好む。

ドミトリエフのSNSには、キア・スターマー英首相やエマニュエル・マクロン仏大統領といった欧州首脳を嘲笑する投稿が散見される。

3月のX投稿では、タス通信の引用として「欧州と英国はロシアのエネルギー資源を懇願することになる」と予測した。別の投稿では、スターマーら欧州首脳を「英国とEUの戦争屋」「混乱の指導者」と呼んだ。

欧州はロシア産ガス離れ

ロシア安全保障会議でプーチンの副官を務めるドミトリー・メドベージェフも、英語版のテレグラムで同様の主張を展開している。現在の欧州は米国の叱責に逆らえない「弱く、魅力もなく、役に立たない存在だ」と述べた。

こうしたレトリックの狙いは明白だ。米国の単独行動主義を持ち上げ、英国、フランス、ドイツを貶め、NATO内部の亀裂を広げることだ。

しかしロシア自身の現実は厳しい。

米カーネギー・ロシア・ユーラシアセンターは、「モスクワの軍事資源の大半はウクライナに縛られている」と指摘する。経済的にも困窮するロシアは、停滞し莫大なコストを伴う戦争に足を取られ、社会が完全に回復することはないかもしれない。

またEU安全保障研究所は、ロシアと中国について分析している。中ロ関係は「著しく非対称」で、北京のほうがはるかに柔軟に戦略を調整できる立場にあり、ロシアが従属的な立場にあるのは明らかだという。

欧州のNATO諸国は、ホルムズ海峡への艦船の派遣を求められた時、米国に「ノー」と言ってドナルド・トランプ大統領を苛立たせた。では今のロシアは、中国に逆らえるのか。

またドミトリエフの予言とは反対に、欧州のロシアに対するエネルギー依存は急低下している。

欧州委員会によれば、EUのロシア産ガス依存はウクライナ全面侵攻当時の45%から2025年には12%へ低下し、残る輸入についても段階的に廃止する法的枠組みが導入された。これは数十年来のロシアの欧州に対する影響力を大きく削ぐものだ。

この文脈で見ると、ドミトリエフやメドベージェフの欧州批判は、自らの弱さの裏返しにすぎない。

同盟国は存立の危機

彼らは欧州を弱く、依存的だと繰り返すが、実際にはロシアこそがウクライナに縛られ、中国との関係で下位に立ち、欧州のエネルギー市場からも排除されつつある。強硬な言葉はクレムリンの強さの証明ではなく、弱さの告白だ。

イラン危機の特徴的な点は、停戦仲介を担ったのがパキスタンで、現在も次の交渉ラウンドの準備を進めていることだ。

今回の中東外交でロシアは中心的役割を果たしていない。中東で最後の同盟国であるイランが存立の危機に直面しているにもかかわらず、ロシアは必要とされなかった。

ロシアは不可欠な存在ではなく、脇に追いやられている。危機管理を担う信頼や権威はない。利害関係を持つ傍観者にとどまっており、イランに対する具体的支援もほとんど提供していない。

ロシアがイランに米国攻撃に関する機密情報を提供したとの報道が出た際も、米国はそれを明確に否定せず、重要視しなかった。大勢に影響はないと見たからだ。

ロシアとイランは2025年1月に戦略的パートナーシップ条約を締結したが、それも相互防衛条約には遠く及ばない内容だった。どちらも相手を救う能力を持たなかったからだ。

ロシアとイランは確かにパートナーだが、その関係には限界がある。ロシアには、ウクライナという主要戦域以外の事態を管理する大国としての余力が乏しい。

イラン戦争でロシアの強さを示す最も有力な根拠は、戦略ではなく経済だ。

米外交問題評議会(CFR)はロシアが戦争の初期受益者になったと指摘し、英シンクタンクのチャタムハウスはこれを「プーチンへの経済的贈り物」と呼んだ。