①最終判断を下す人 “腹落ちしたか”
根回しがうまくいかない場合の多くは、その対象者への対応を一律に行ってしまうことにあります。「場」に関わる人を冷静に洞察すると、大多数が集まる「公の場で見て取れる役割」とは別にもっと複雑で繊細な見えない「関係性(場の構造)」を見出すことができます。
この関係性を踏まえずに話を進めると、こちらがどれだけ丁寧に腹落ちや合意をつくったとしても、別の方向から横槍が入り、合意がひっくり返されたり、進みかけていた話が突然止まったりします。そうならないためには、根回しをしようとする対象者の「場の関係構造」を踏まえた特性を理解することが欠かせません。これは、次の4つに分けると良いでしょう。
〈①決定権者(最終判断を下す人)〉
「決定権者」といっても、表向きの役職とは限りません。もちろん組織だった団体の場合は、なにがしかの役職を伴っていることが多いのですが、名目上の責任者ではなくても、「最終的に合意を成立させるために承認が必要な人」という実質的な決定権者もいるので注意が必要です。
「決定権者」に対する根回しの基本は、「腹落ち(可能なら合意)」です(第2回参照)。組織などでは、「公の場」での決議が必要となりますので、「合意」までは必須とは言えませんが、少なくとも、ある程度の「腹落ち」は実現する必要があります。
決定権者の価値観、判断基準、恐れているリスク、重視している未来像など、これらを見誤った根回しは、どれほど丁寧な対応をしたとしても成果に結びつきません。なお、決定権者が表に立たず、あえて「場の空気を通じて意思を示す」ようなケースも珍しくありません。だからこそ「誰が真の決定者なのか」を丁寧に見定める必要があります。
②積極的な人 “不満や懸念を解消したか”
〈②参画者(積極的に動く当事者)〉
参画者は、なんらかの会議や協議、話し合いの場などがあった際に、その話し合いや運営などに積極的に関与しようとする人たちです。
参画者は、決定権者の意思を汲みながらも、自分たちの不満や懸念が解消されないと、過度に足を引っ張るような行動をとったり、公の場をかき乱したりします。つまり、参画者に対して根回しができていなければ、案件は形だけ動いても、実質は前に進みません。
また、多くの場合、参画者は「場の課題観」や「場の人間関係の作用」などを深く理解しています。
そのため、参画者が感じる違和感や不満を摘み残していると、後々、大きな問題として噴き出す可能性があります。
したがって、根回しを行う際には、決定権者より先に参画者の話を丁寧に聞き、「現場に根差した腹落ち」を整えておく必要があります。

