日本と中国で異なる社会保障

――高齢化で社会保障費が高騰、財政が圧迫される。この状況は日中共通なのでしょうか。

【片山】総額だけでは分からない、大きな違いがあります。日本の財政支出は年金と医療費がだいたい同規模なのですが、中国は年金が大半を占めています。

というのも、中国は医療保険の支出をコントロールしているため、給付が抑制されているのです。長期の入院治療においても保険給付には上限があります。さらに大病院で治療を受けると自己負担率が上がり、小さな病院だと低いという仕組みもあります。どの程度のお金を支払って、どの水準の治療を受けるのか、自分で判断する必要があるのです。

健康保険に加入してさえいれば、誰でも低額で高水準の治療を受けられるという手厚い給付を受けられるのが日本。中国はそこまで手厚い給付はない代わりに、財政支出が相対的に少なく、持続可能な仕組みになっています。

不正診療を防ぐ強烈な仕組み

――日本でも高額療養費制度の改革が始まっています。コスト削減派からは「中国に学べ」という声が上がっても不思議じゃなさそうな。デジタル国家・中国ならではの取り組みとしては、過剰医療を規制するデジタル・ソリューション「中国医保智能監管両庫」(中国医療保険・スマート監督ダブル・データベース)も強烈な仕組みですよね。国が定めたデータベースから外れた診療、投薬を検出する仕組みです。知人の中国人は、医療費を削るためにAIを使っていると嘆いていました。

【片山】医療データベースについては医療水準切り下げという見方もあるかもしれませんが、過剰診療や不正診療抑制の先駆的な取り組みという見方もあり、大いに注目されています。

――確かに中国人にも「医者は信用ならん。不必要な薬をドカドカ出して、庶民の金をむしりとっていく」という不信感は強いですよね。

【片山】どういう医療、保険制度が理想だと考えるかは国・地域によっても違いますし、人それぞれという側面はあります。現在の中国の医療は日本ほどではないにせよ、一定の医療サービスは受けられ、かつ制度の持続可能性が高いという点では評価できます。