公務員と農民の年金格差は「29倍」
――医療保険はコントロールしているが、年金は税金が注ぎ込まれている、と。
【片山】問題は年金です。中国には3つの年金があります。
第一に企業従業員が加入する「都市職工基本養老保険」。日本の厚生年金に近い制度です。この年金は、基本的には現役世代が納める保険料で運営されており、税金の補填は給付額の約2割程度と健全で、平均給付額は月3743元(約8万6100円)となっています。問題は残る二つです。
第二の年金が、先ほど紹介した、自営業者や農民を対象とした「城郷居民基本養老保険」。日本の国民年金に近い制度です。作ったのはいいものの、給付額は雀の涙で、平均すると月223元(約5100円)。これではさすがに暮らしが成り立ちません。
差別しているわけではなく、単純に保険料をほとんど支払っていないことが要因です。被保険者が掛け金を選べる制度なのですが、多くの人が年100元(約2300円)などの最低額を選択し、給付が少なくなってしまっています。実はこれでも中国政府は税金で補填していて、税金の補填は約6割。半分以上を税金で補っているのですが、それでも雀の涙のような年金しか支払えません。
5億人以上が加入する、3つの年金では加入者数最多の保険ですが、老後の暮らしを支えるという意味ではきわめて不十分なのです。
そして、第三の年金が公務員を対象とした機関事業単位基本養老保険。こちらの平均支給額は月6350元(約14万6000円)。「城郷居民基本養老保険」のなんと29倍という手厚い給付です。
習近平でも手を付けられない
――すさまじい格差がありますね。公務員は恵まれている?
【片山】公務員の保険は2014年に企業従業員が加入する「都市職工基本養老保険」と統合されました。それまでは保険料を支払わずとも年金が支給されていたので、是正されたとみることもできます。ただ、あまりに急激な変化は問題ということで特別な加算措置が設けられた結果、他の国民と比べるとかなり手厚い年金をもらっています。
――年金の額も違いますが、税金の支援もすさまじいというか。5億人が加入する自営業者・農民向けの年金に税金補填は4346億元(約10兆円)、一方で6000万人しか加入していない公務員向け年金の補填は6673億元(約15兆3000億円)。不公平すぎるような。
【片山】自営業者、農民の保険料を引き上げる、公務員の年金給付を減らす。この改革は必須ですが、痛みを伴うだけになかなか着手できません。
――痛みを伴う改革はやりづらい。独裁国家でも、トップの好き勝手に改革できるわけではないわけですね。

