【中司】そのためにも、自分の強みや自分の弱みをどうやって知るのかといったら、毎日の行動を書き出して振り返ることで分かってくるんです。例えば周りから褒められたことや、うまくいったことを挙げてみる。そういった部分の集合体が自分の強みなので。
【俣野】人はそもそも自分ができるようになったら、その瞬間にできなかった自分を忘れてしまいがち。できなかった過去や、その頃の自分を忘れてしまう。なぜなら、できることが当たり前になってしまうから。できることが当たり前になってしまうと、強みなのか、才能なのかわかんなくなってくるんですよね。ところがその過程を書いておくことによって、できるプロセスが視覚化できる。それがあるから、今度それがノウハウになる。
もう1つは、できなかった頃の自分というのは、あくまでこれは簡単にいうと敗戦記録。できなかったんだから、それは敗戦したときのレコードなわけです。それがあるから、教育という形で過去の自分を救える。過去の状態に近い自分。まだそこにたどり着いていない人たちを救えるヒントになるわけですよね。敗戦記録をとるのは、やはりそれがノウハウですからね。
【中司】記録して客観視するから、初めてそこで思考が生まれると思うんですよね、今後どうしていくかという。
【俣野】『プロフェッショナルサラリーマン』だってそうですからね。敗戦記録なんです。自分自身が「こうやっときゃよかったな」と思うことの集合体。でも今、なぜこれを書けるかといったら、やはり敗戦記録をきちんと自分の中でメモしておいたからなんです。そう、僕にとっての危機感が芽生えたのは、リストラの実施。会社が実施したことで、今までベンチマークにしていた人が落ちていったことですよね。「え? そこまでレール、俺、敷いていたのに」みたいな。落ちていったということは、レールが途切れたということ。その人は定年まで行かなかったわけなので。
「あ、ここまで行ったら俺も落ちてしまうかもしれない」と思ったので、危機感がワーッと出てきた。「このままではいけない」という感情が強烈に芽生えてきたんですけど、じゃあ、そうじゃない人……。僕にとってはチャンスだったんですけどね。変わるためのチャンスだったんですけど。ピンチの顔をしてやってきたんですけど、それがない人もいますもんね。
【中司】なるほど。
【俣野】あと考えたほうがいいのは、例えば名刺で会社の名前を隠したときに、あなた自身に何が残りますかということを認識すること。社名を言わずに自己PRできるか。それは1度やったほうがいいですよね。だって、会社の将来が、これからあなたが思うような形になっていくとは限りませんから。