日銀が「世界の常識」をねじ曲げた

ベン・バーナンキ元FRB議長は「長期金利は、中央銀行ではなく、奥深く賢明なグローバル金融市場の参加者によって決められる」という言葉を残しています。

これは金融を学んだ人にとっては常識で、長期金利を決めるのはマーケットです。

この常識を日銀は変えてしまいました。日銀のホームページに「教えて!にちぎん」というページがあり、以前はそこに「長期金利は市場が決める」と書かれていたのですが、異次元金融緩和後、「長期金利は日銀がコントロールする」に変更してしまいました。ヒドイ話です。

長期金利は、本来、中央銀行がコントロールできるものではなく、長期国債を爆買いしたことでゼロ金利状態にしたに過ぎません。これをコントロールと呼ぶとは!

長期金利は、短期金利のように日銀が金利を上げ下げできるわけではないため、日銀が長期国債の保有を減らしていけば、長期金利は上がっていきます。

長期金利は市場が決めるという世界の常識に、日本も回帰していくことでしょう。

その一方で、「短期金利は中央銀行が決める」という常識が覆され、「短期金利を中央銀行が決められない」という非常識な事態を招く可能性が日本にはあります。どういうことか、説明しましょう。

住宅ローンは固定金利の一択

これまでは、日銀が政策金利を上げ下げすることで市中の短期金利をコントロールしてきました。しかし今後、政策金利が上がらなくても、市中の短期金利が上がる可能性があります。

なぜなら、インフレ期は基本的に好景気なので、お金を借りて事業を行えば、借金以上の利益を出せるからです。一杯700円だったラーメンが1000円になり、1500円でも売れるようになれば、借金を返しても十分な利益が残ります。

こうして事業資金の需要が増加し、金利を上げても借り手がいるのであれば、資金を貸す銀行は貸出金利を上げるでしょう。そのほうが銀行は儲かりますから。

住宅ローンなどの金利もそれにつれて上がることになり、日銀が政策金利を上げずに低く据え置いていても、市中の金利は上がっていくことになります。

中央銀行が市中の短期金利をコントロールできない歴史上世界初の事態に、日本がなるかもしれないのです。

もし、住宅ローンを変動金利で借りているなら、すぐにでも固定金利に借り換える方が賢明だと私は思います。日銀が政策金利を上げられなくても、市中の短期金利は上がっていく。そうした事態に備えるためです。

総理大臣官邸で会談を行った日本銀行の植田和男総裁と高市総理
2026年2月16日、首相官邸で会談を行った日銀の植田和男総裁と高市早苗首相(画像=内閣府/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons