「ブルーライトは良くない」の意外な裏側
夜にそのアプリは開かない、SNSのチェックは22時まで、などルールを決めたほうがいいでしょう。ただし10代になって親に隠れて夜に自分なりの活動をしたいと思うのは、子どもの正常な発達の中に含まれているものです。私が10代の頃は深夜放送、その後はテレビゲーム機などが子どもの発達を阻むといわれていて、それが2010年代以降はスマホとされているのが現状だと思います。
「スマホのブルーライトが睡眠に悪影響を与える」という主張がなされる際、よく引用されるのがペンシルベニア州立大学の研究チームが行ったiPadを使った実験です(※2)。確かに信頼できる実験ですが、この実験設定が端折<ルビ:はしょ>られて、結果だけが独り歩きしています。
※2 『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America』2015年「Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertness」(Chang AMら)
少し長くなりますが、実験内容の概要を説明します。参加した健康な成人に規則正しい生活をしてもらいました。22時から6時までの8時間を就寝スケジュールとして固定して、18時から寝る時刻の22時までの4時間、5日間連続で読書をしてもらいました。
読書のやり方は2通りです。一つはiPadを使った読書です。光は最大輝度に固定され、端末にスタンドが置かれ、目から30センチから45センチで固定しました。もう一つの条件は紙の本の通常照明下の読書です。結果はどうなったのか。
iPadを毎晩4時間×5日という特殊条件
夜の睡眠の準備状態を表すメラトニンの分泌開始時刻がiPad読書のほうでは通常照明下の読書と比べ、5日後に1時間半も遅れたのです。これは体内時計のリズムが遅れたということを表します。寝つきまでにかかる時間はiPad読書で平均10分遅くなりました。
また主観的に、夜の就寝前にはiPad読書では通常の光のもとでの読書と比べて「眠くない」となり、翌朝には「より眠い」となり、覚醒にも時間がかかることがわかりました。これらもやはり体内時計の遅れによるものと考えられます。
この結果から、ブルーライトが体内時計を遅らせるため、寝つきが悪くなる、翌朝の覚醒が悪くなると結論づけました。この実験をどう読み解くべきか。読者の方は自分がこの実験に参加することを想像してみてください。
まず、iPadを最大光量にして、30センチから45センチほどの近距離で見ることを毎晩4時間、連続5日間繰り返す、このような極端な利用を私たちはしているでしょうか。仕事や用事もありますから、5日間もこのような日を繰り返すことはまずないと思います。それに、私たち人間は目が疲れてくると強い光を見るのをやめるのが普通です。これほど特別な環境にしなければ、ブルーライトが睡眠に与える影響を明らかにするのは難しかったのだと思います。実際、論文を書いた研究者自身も、研究の限界として、iPadを最大輝度に固定していること、利用時間が連続4時間ということについて言及しています。

