「100万円の札束」を渡してきた
だが、森組長の陳述書には事実に基づく迫力がまるでなかった。
考えれば無理もないことである。ヤクザは家宅捜索などを頻繁に受けるから、メモを取る習慣がないし、取らない。
対して私のような商売では取材し、メモを取るのが仕事のようなものだ。綿密さ、緻密さ、正確さの点でヤクザは問題にもならない。まして森組長の陳述書はウソで固めた細木側に立ち、細木を擁護する目的を持つから、ウソにウソを重ねることになる。迫力の出ようがない。
陳述書には、森組長が南青山で私に初めて会ったのは2006年2月3日だと明記してある。
だが、この日、私は息子が刺された件で三鷹署に呼び出され、事情聴取を受けていた。三鷹署の聴取書には月日も記されているし、担当警部の署名もある。私はそのコピーを提出し、簡単に森組長陳述書のウソを論破した。
しかし、私が驚くことがあった。森組長と私との間では現金入りの封筒を受け取れ、受け取れないというやり取りがあったわけだが、それを否定するとばかり思っていた。ところが森組長の陳述書では肯定し、実際にあったこととしている。
細木側の阿部鋼弁護士などは「ウソだ。溝口は山健組に100万円の札束を受け取れと迫られた、と最近、雑誌で書いている。似たような事件が短日月の間に二度も起こるわけがない」と強弁していた。
「あんたがきちんと書いてくれたことの御礼だから」
しかし、森組長の陳述書では、封筒の性格を変えた上、まるきりウソのストーリーを作り上げてのことだが、やり取りを認めている。参考までに森陳述書のその部分を引用してみよう。
〈帰り際、私は「こないだご馳走になった御礼」といって用意してあった茶封筒(森組長註・現金50万円入り)を溝口に渡そうとしました。六代目や親父のことをよく書いてくれて本当に嬉しかったので私のポケットマネーから出したおカネです。
溝「受け取れません。竹書房からの信頼がなくなる……」
私は先日の接待は竹書房が支払ったので竹書房の手前受け取れないのかと思いました(溝口・単に間に合わせで昼飯を一緒に食べただけ。もともと御礼をいわれるような会食ではない)。
森「これは、雑誌社とは関係ない。あんたがきちんと書いてくれたことの御礼だから、別に雑誌社の人には言わなくてもいいだろう」
溝「わからなければいいという問題ではないから」(森組長・といって固辞)
森「あんたも頑固だな。だったら、これはこっちで次のメシ代として預かっておくから。先生、銀座の行きつけの店ある?」
溝「ありますよ」
森「わかった、そしたらこのカネで今度は銀座の店行こや。近いうちにみんなで飯食おう。竹書房の人にもよろしく言っといてよ。それまで預かっておくからな」
溝「そうしてください」

