AIは関わり方によって子どもの心の成長を妨げてしまう。札幌国際大学准教授の安井政樹は「AIに『依存』して人の気持ちまで聞くようになってしまうと、人の気持ちを自分で推しはかろうとしない子どもが育ってしまう。心を育むには、『依存』ではなく『自律』の選択をする必要がある。AIに機械だからと暴言を吐く子もこの『自律』ができておらず、心が育っていないのだ」という――。

※本稿は、安井政樹『「考える力」と「好奇心」をぐんぐん伸ばす AI×学び入門』(日経BP)の一部を再編集したものです。

「考えないクセ」の大きすぎる悪影響

どうしても、認知オフロード(記事1本目参照)してはいけない領域、それが、人の気持ちです。

たとえば、ケンカをしたとき。

「なんであの人は怒っているんだろう?」
「この場面では、どうしたらよかったんだろう?」

こうした疑問は多くの場合、はっきりとした結論が出ません。しかし考える時間は決して無駄ではなく、むしろ、人間だからこそ引き受けなければならない思考だと思っています。

人と人が関わる場面では、相手の表情や声のトーン、そのとき置かれている状況や背景を感じ取りながら、その場その場で、

「これは言わないほうがいいかな」
「今は距離を取ったほうがいいかな」

などと迷いながら関わることが不可欠です。そこに、人間らしさがあるともいえるでしょう。

ベンチに座って話をしている二人の少年
写真=iStock.com/vejaa
※写真はイメージです

人の気持ちはAIにもわからない

もし、こうしたことまで含めて、

「このとき、相手はなぜ怒っているの?」
「どうすれば相手は喜ぶの?」

と、すべてをAIに聞くようになってしまったら、どうなるでしょうか。

私がいちばん懸念しているのは、人の気持ちを自分で推し量ろうとしない子どもが育ってしまうことです。AIに聞けば、それらしい答えは返ってきます。しかし、その人の本当の気持ちは、AIにも、私たちにも、わかりません。

だからこそ、大人は子どもにはっきり伝える必要があります。

 「その人の気持ちは、AIにもわからないよね」

 「最後は、自分で考えるしかないところだね」

これは、突き放す言葉ではありません。人として大切なところを守るための言葉です。

だからこそ、大人は子どもに、

「人の気持ちは、AIにもわからないよね」

「最後は、自分で考えるしかないところだね」

と伝えていかなければならないのです。