「自社の過ち」も辛辣に追及してきた

そうした表の顔だけではない。キャスターになってからは、取材中に小指を切断したり、取材相手に殴られたり、銀座や赤坂のママたちが料治の顔を見てから出勤したり、といった数々の「伝説」を残していた。その激動の人生を、元・NHK記者でルポライターの瀧井宏臣氏が『武骨の人 料治直矢』(講談社、2004年)で生き生きと描いている。

瀧井宏臣『武骨の人 料治直矢』講談社
瀧井宏臣『武骨の人 料治直矢』講談社

人間味にあふれるキャスターが、たとえば、フィリピンのベニグノ・アキノ元上院議員暗殺事件の真相を明かした世界的スクープを生み出すのだから、見る者を惹きつけないはずがない。料治氏は、1996年に発覚した「TBSビデオ問題」(オウム真理教の幹部に、坂本堤弁護士のインタビューテープを放送前に見せ、そして、その事実を隠蔽していた問題)でも率直に同社を批判している。

私にとって「報道特集」とは、自分たちだけではなく、自社の過ちについても、辛辣すぎるほどに追及する、そんな報道番組の見本・手本と言える憧れの的だった。それだけではない。料治氏は、吉田戦車の傑作漫画『伝染るんです。』のなかで、幼児が「りょーじしゃん」とテレビに向かって叫ぶぐらい名が通り、多くの人に親しまれていたのである。こうした栄光こそ、今回の炎上の原因であり、足枷ではないのか。