財政破綻の危機からようやく脱出

圧迫したのは関西国際空港の開港に関連した事業への投資だった。本来なら地域経済の活性化の目玉になるはずで、泉佐野市は約1550億円を投資したが、バブル経済の崩壊によって予定していた税収等がご破算となり、累積赤字が積み上がる。2009年、泉佐野市は財政健全化団体に指定された。

その後に泉佐野市長選に立候補した千代松氏は、市長の給与40%カット、市職員の給与20%カットを公約に掲げて当選するが、さまざまな反発にあい、完全アウェイな中で市長としての仕事が始まった(その後、職員の給与は8~13%カットに着地)。

そのやり方は自らも「きらわれる市長」と自虐するように、激しい。

だが、市立病院の民営化、ごみ収集の有料化、犬税の導入などの施策を重ね、2013年度決算で、財政健全化団体を脱した。ふるさと納税に力を注いだのも財政の健全化を目指すためだった。

「こども基本条例」の制定と前後して、こども朝食堂が始まった。泉佐野市内の13の市立小学校のすべてにおいて、週に2回、午前7時半頃から在校生は誰でも朝食をとることができる。学校教員の業務が増えないよう、運営を外部の法人等に委託した。ふるさと納税で得た寄附金を財源に、市内の小中学校にプールの建設を進めた。

母親の匿名性か、こどもの出自を知る権利か

赤ちゃんポストについて、市議会からは特段反対意見は出なかったという。だが、大阪府との話し合いはまだ決着していない。

「3月末に、プロジェクトチームとしてまとめた事業計画書を大阪府に提出します。詳細を詰めるのはこれからです」

こども部長・島田純一氏が補足した。大阪府が管轄する子ども家庭センター(児童相談所)で新たにかかる人件費を泉佐野市が補填する案もある。並行して、妊娠女性のシェルターの運営に着手するという。

貝塚市役所に併設する大阪府貝塚子ども家庭センター(右)
筆者撮影
貝塚市役所に併設する大阪府貝塚子ども家庭センター(右)

「うちの優秀な職員たちがちゃんとやってくれるから」

本気とも冗談ともつかない顔で千代松市長が笑ったが、生まれてくるこどもの出自を知る権利を保障する観点から、子ども家庭センター(児童相談所)を管轄する大阪府がどのように判断するかは未知数だ。