スクワットのボトムポジションで足首が曲がった状態をスポーツ科学者は「背屈」と呼ぶが、この背屈を維持するのに必要なのが、前脛骨筋(すねにある筋肉)のパワーと、足首と足全体の筋力だ。

ポール・ウェイド著、山田雅久翻訳『プリズナートレーニング外伝 監獄式ボディビルディング』(CEメディアハウス)
ポール・ウェイド著、山田雅久翻訳『プリズナートレーニング外伝 監獄式ボディビルディング』(CEメディアハウス)

その体勢から体を押し上げると足首が伸び、ふくらはぎの筋肉(ヒラメ筋と腓腹筋)に大きな負荷がかかる。

この動作を繰り返せば、ふくらはぎの筋量が増えていく。地に尻が着きそうになるワンレッグ・スクワットまでいけば、ふくらはぎにかかる負荷が最大化する。

ワンレッグ・スクワットが20レップスできるようになれば、しなやかでパワフルなふくらはぎができている。外見的にも大きくて立派になっているだろう。

足首とアキレス腱が防弾され、衝撃を受けても耐えられるものになる。このように、ふくらはぎに筋肉をつけたいなら、ワンレッグ・スクワトに向かってスクワットシリーズをステップアップしていくことが最初のミッションになる。

ダイヤモンドのようなふくらはぎに育っていくことから、これ以外のエクササイズを必要としないと感じるアスリートは多い。

ふくらはぎの大きさには、遺伝的要素が影響してくる。大きく成長する可能性だけでなく、筋肉の長さといった点にもそれが現れる。

たとえば、比較的「短い」ふくらはぎを持つ兄弟(ブラザー)がいる。特に、アフリカ系アスリートに多く、ふくらはぎにある大きい方の筋肉―腓腹筋―の「腹」が短くてずんぐりしている。

トニー・ピアソンのような黒人系ボディビルダーを観察すると、ほかのすべての筋肉は発達しているのに、ふくらはぎだけは、膝の下にはまったテニスボールのように見える。

いくらがんばっても、努力に応えてくれるだけの筋肉がそこにはない。もちろんこれは一般論であり、セルジオ・オリバのように、長く大きなふくらはぎを持つ黒人系ボディビルダーもいる。

運動能力的な観点からいうと、短いふくらはぎが問題になることはない。ふくらはぎが短くても人並み外れた運動能力を発揮するスプリンターはザラにいる。

足首のパワーを決めるのが、ふくらはぎの大きさではなくアキレス腱の弾力性だからだ。

短いふくらはぎの方が運動能力を高めると主張する人がいるほどだが、ふくらはぎが短い方がいいという議論はボディビルディングの世界では起こり得ないだろう。

ポール・ウェイド(PAUL"COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、“コンビクト・コンディショニング・システム”として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で“コーチ”を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。
当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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