不満広がるアメリカにどう答えるか

重要なのは、トランプ氏の発言の背後にあるアメリカ社会の変化です。アメリカ国民の間で、「なぜ、アメリカが他国の防衛に莫大な費用を負担しなければならないのか」という疑問が広がっているからです。これはトランプ氏だけの考えではなく、共和党の多くの議員や有権者が共有する感情です。

では、日本はどう対応すべきでしょうか。

第一に、防衛費の増額でアメリカ側の不信感を払拭する必要があります。日本政府は2027年度までに防衛費をGDP比2%まで引き上げる計画を発表しました。これは、NATO諸国が目指している水準と同じです。この約束を確実に実行することが、トランプ政権との信頼関係を築く第一歩です。

第二に、日本の防衛能力の実質的な向上です。単にアメリカから高額な兵器を買うだけでなく、日本が自ら敵基地攻撃能力(反撃能力)、サイバー防衛能力、宇宙・電磁波領域での能力を高めることが重要です。

第三に、地域の安全保障への貢献です。日本はすでに、オーストラリア、インド、東南アジア諸国との安全保障協力を強化しています。これらの国々との連携を深めることで、「日本はアジア太平洋地域の安定に貢献している」とアメリカに示すことができます。

第四に、経済的な貢献です。アメリカが重視するのは、単なる軍事だけではありません。経済、技術、エネルギーなど、幅広い分野での協力が日米関係を強化します。特に、半導体などの先端技術分野での協力は、アメリカにとって極めて重要です。

「守ってくれる」ではなく「必要」

そして最も重要なのは、日本がアメリカにとって唯一無二の戦略的根拠地であることを、機会を捉えてはアメリカの世論に伝えていくことです。

日米同盟を強固にするには?
出所=『13歳からの戦争学』(アスコム)

それなのに、「アメリカが日本を守ってくれている」ということだけが日本社会に広く浸透しています。「アメリカも日本が必要」という事実を日本人は知りません。なぜでしょうか。

最大の問題は、日本の官僚、学者、メディアがアメリカ側の公開資料にちゃんとアプローチしていないことです。

小川和久『13歳からの戦争学』(アスコム)
小川和久『13歳からの戦争学』(アスコム)

アメリカは民主主義国家であり、国防総省の年次報告書、軍高官の議会証言、シンクタンクの研究報告など、膨大な戦略文書を公開しています。そこには、「日本の基地は死活的に重要」「日本を失えばアメリカの太平洋戦略は成り立たない」といった記述が繰り返し登場します。深掘りすれば詳細なデータも出てきます。英語で書かれているとはいえ、誰でもアクセスできる公開情報です。

にもかかわらず、こうした資料を読み込み、日本の戦略的価値を国民に伝える努力がほとんどなされていません。これは国家的怠慢たいまんというほかありません。結果として、日本人、そしてアメリカ人の多くは「アメリカが日本を必要としている」という事実を知らないまま、70年以上が過ぎてしまったのです。

いまこそ、日本の政治家、官僚、自衛官、そしてメディアは、根拠もなしに「アメリカに守ってもらっているから逆らえない」と信じ込む思考停止から抜け出し、「アメリカ政府のデータをもとに、日本の戦略的価値を語れる」ようにならなければなりません。

トランプ大統領が日本を守るかどうかは、結局のところ、日本次第でもあります。日本が「守ってもらうのが当然」という姿勢では、アメリカの支援は得られません。

しかし、日本が「自ら戦う覚悟を持ち、そのための能力を高めている」姿勢を示せば、アメリカも日本を見捨てることはないでしょう。

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