お金では買えない価値がある
第二に、インフラとしての米軍基地です。日本列島に置かれた76カ所の米軍施設には、空母が停泊できる深い港(横須賀)、大型輸送機が離着陸できる長い滑走路(横田、嘉手納)、そして膨大な燃料・弾薬の貯蔵施設があります。三沢基地(青森)の情報機能もアメリカ本土並みです。
横須賀はアメリカ本土以外で唯一、空母の大規模修理ができる港であり、広島県内にある3カ所の陸軍弾薬庫(秋月弾薬廠)は合計約7万5000トンの貯蔵能力を持ち、極東最大の規模を誇ります。
アメリカのほかの同盟国には、このような機能は備わっていません。こうした施設を一から建設するには、数十年の歳月と数兆円規模の投資が必要です。
第三に、同盟国としての信頼性です。日本は70年以上にわたって民主主義と法の支配を維持し、日米安保条約を一度も破ったことがありません。
政変で反米政権になったり、テロの脅威にさらされたりするリスクがほとんどない。この政治的安定は、軍事基地にとって何よりも重要な条件です。
これらの、太平洋の日付変更線から西、アフリカ南端の喜望峰までの範囲で行動する米軍を支える能力は、第一線部隊を支える燃料・弾薬の貯蔵能力と情報収集能力を含め、アメリカ本土のものと比べても遜色ありません。
それを、日本国の防衛と重ねて自衛隊が守っています。
日本を失えば、世界のリーダーの座も失う
この日本列島という戦略的根拠地を失うと、アメリカは喜望峰までの範囲で行動する米軍を支える能力の80%ほどを失います。日本の代わりをできる同盟国はないので、世界のリーダーの座から滑り落ちてしまうのです。
会社に例えるとイギリス、ドイツ、韓国などの同盟国の基地は支店や営業所のレベルですが、日本はアメリカ本土が東京本社なら、大阪本社の位置づけなのです。
さきほど述べたように、戦力の面ではアメリカと日本は非対称的ですが、その一方で米軍を支える能力はアメリカ本土並みで、それを合わせると日本はアメリカの同盟国の中で最も双務性の高い、つまり対等に近い重要な同盟国なのです。
私が見るところ、トランプ氏の発言は、必ずしも「日本を見捨てる」という意味ではありません。むしろ、「日本はもっと防衛費を増やし、自ら防衛する能力を高めるべきだ。そうすれば、アメリカも喜んで日本を支援する」というメッセージだと解釈できます。
実際、トランプ政権の1期目を振り返ってみても、日米安保が弱体化したわけではありません。むしろ、中国の脅威を前に、日米の軍事協力は強化されました。
トランプ大統領は、日本の防衛費増額を強く求めましたが、同時に「日米同盟は揺るぎない」とも繰り返し述べています。
トランプ氏はビジネスマン的な発想を持っています。彼にとって同盟は「取引」です。「日本がもっと負担すれば、アメリカももっと貢献する。日本が負担を減らせば、アメリカも貢献を減らす」という等式で考えています。
この考え方は、伝統的な外交官や軍人とは異なりますが、必ずしも非合理的ではありません。

