同紙によると、島の造成にあたり、約3億2000万立方メートルの砂が海底から吸い上げられた。東京ドームなら約260杯分に相当する。総開発費は約140億ドル(約2兆1000億円)に達し、防波堤に囲まれた開発域の総面積は約50平方キロメートル(東京の江戸川区とほぼ同じ広さ)に及ぶ。

だが、その成果は、投資規模にまるで見合わなかった。米高級ライフスタイル誌のエリート・トラベラーは、ドバイの不動産大手ナキールが2003年に発表した構想に約150億ドル(約2兆3250億円)が注ぎ込まれた時点でも、完成していた島はわずか1つだったとしている。

各島の面積は2万3000〜8万3000平方メートル(東京ドームの約半分から約1.8倍)。約8.7キロにわたって広がる島々の大半は、世界金融危機を経て、工事途中のまま放棄された。かつてUAE最大級の野心的プロジェクトと称された群島は、砂ばかりが広がるゴーストタウンと化した。

ザ・ワールドは、ドバイに根づく「まず建設し、需要は後からついてくる」という開発哲学を象徴している。ヤシの木型の人工島パーム・ジュメイラや、高さ828メートル(東京スカイツリーの約1.3倍)で世界一の超高層ビルとなったブルジュ・ハリファの成功により、現地に開発哲学として定着した。だが300の島々は、その賭けが裏目に出た証として、今もペルシャ湾にぽつりと取り残されている。

2009年12月21日、ドバイ沖に、アラブ首長国連邦の不動産開発会社ナキールが開発した「ザ・ワールド」と呼ばれる人工島群を上空から撮影した写真
写真=AFP/時事通信フォト
2009年12月21日、ドバイ沖にアラブ首長国連邦の不動産開発会社ナキールが開発した、「ザ・ワールド」と呼ばれる人工島群を上空から撮影した写真

原油急落でプロジェクトは凍結

波間に漂う小舟のように、行き先をすっかり見失ったプロジェクト。悲劇の始まりは、原油価格の下落だった。

2008年、世界金融危機で原油価格は1バレル140ドル(約2万1700円)から40ドル(約6200円)へ急落する。ドバイ沖では、まさに浚渫船が昼夜を問わず海底の砂を吸い上げ、世界地図を模した300の島々を造成している最中だった。工事はすでに6割まで進んでいた。

中東金融専門メディアのファイナンス・ミドル・イーストによると、事業主体のナキールは資金繰りが急速に悪化。経営破綻を回避するため約100億ドル(約1兆5500億円)もの救済資金が投じられた。

ナキールは、ドバイの政府系投資会社ドバイ・ワールドの不動産開発部門だ。親会社のドバイ・ワールドも、金融危機前に膨れ上がった巨額の借入金にあえぎ、債務返済の停止を宣言した。世界の金融市場に衝撃が走った。

米全国紙のニューヨーク・タイムズは2010年9月、ドバイ・ワールドが総額249億ドル(約3兆7350億円)の債務再編で債権者の99%から合意を取り付け、数週間以内に手続きが完了する見通しだと報じた。返済停止の宣言から1年足らずでの決着だった。全額回収の見込みはないと、ほとんどの債権者が理解していたのだろう。

再編後の債務は5年物44億ドル(約6820億円)と8年物100億ドル(約1兆5500億円)、計144億ドル(約2兆2320億円)に整理された。同紙によると、これとは別にドバイ政府が約90億ドル(約1兆3950億円)の融資を出資に転換している。政府の譲歩なしには成り立たない救済策だった。

浮かれたリゾートになるはずだった人工島は、石油経済への依存と過剰な借入により、借金の底へと沈んだ。