もう1点、明石教授が心配しているのが、閉経後の患者の増加だ。
「患者は近年、すべての年代で増えていますが、特に伸びているのは。60代、70代の患者さんです。従来、日本人では40代後半が一番の乳がん好発年齢でしたが、最近そこを追い越してしまいました。原因の一つは、閉経後の肥満と考えられています」
実は、乳がん検診受診率は60歳代以降一気に低下している。最もリスクが高く、気を付けるべき人たちが検診していないのは、なんとももどかしい。
「もう絶対、早期発見の方が治る確率は高いです。日本の乳がんの8割は、ステージIIまでで発見されており、早期発見・早期治療による、10年後の相対生存率は90%以上です。早期発見するのに越したことはありません。
それに早期発見だと、治療費も安価で済みます。昨今は、新しい薬がどんどんできていて、素晴らしい効果が期待できますが、それらは総じて高額で、中には年間1000万円以上もするものもあります。患者さん本人の負担も大きいですし、医療財政への圧迫も大変なものがあります。
早期発見なら、体への負担も少ない治療で済む可能性も大きいです」
乳がんから自分や家族の生命を守るために
昨今は、検診の受診とともに「ブレスト・アウェアネス(乳房を意識する生活習慣)」と呼ばれるセルフチェックも推奨されている。これは、自分でがんを発見するためというよりは、自分の胸の小さな変化に気付き、異変を感じたら自己判断せず、ただちに医療機関での検査へとつなげるための啓蒙活動だ。
「これまでの自己触診のように自分で乳がんを見つけてと言われても発見は難しいのではないでしょうか。だって皆さん、がんに触ったことがないのですから。ブレスト・アウェアネスは、自分の胸に関心をもって変化に気づくための生活習慣です。たとえば入浴やシャワーの時や着替えの時など、ちょっとした機会に自分の乳房を見て、触って、感じてみましょう。入浴の際に、石鹸を付けて撫で洗いするのもいいですね。毎月変化がないかをチェックし、変化があれば受診してください」
明石定子(あかし・さだこ)
東京女子医科大学 外科学講座 乳腺外科学分野 教授・基幹分野長
1990年東京大学医学部医学科卒業、国立がん研究センター中央病院乳腺科・腫瘍内科 外来病棟院長などを経て、2022年9月より現職。日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)理事長。日本女性外科医会(JAWS)事務局、日本オンコプラスティックサージャリー学会理事。



