「乳房タイプを通知するべきではないかという議論は日本でも、10年ほど前から行われてきました。でも、超音波検査の精度はオペレータの技術によってバラツキがあるため、全国で導入するには技術認定や研修・資格制度の整備が必要です。また、税金を使う公的がん検診では、がんの早期発見ではなく死亡者を減らすことが目的なので、死亡率減少の確固たる裏付けが不足している超音波検査の導入は時期尚早との理由から、結論が出ないまま今に至っています」(明石教授 以下同)
要するに、高濃度乳房であることを伝えたとしても、その先の検査の質の担保に問題があるため、導入は見送られてきたわけだ。
マンモと超音波検査で発見率が向上する研究も
ただ、7万人もの40代の日本人女性を対象とした国家的プロジェクトである「J-START(ジェイ・スタート)」試験では、超音波検査を併用する検診と併用しない検診(マンモグラフィのみ)の比較試験を実施し、超音波検査の有効性の検証を15年前から進めている。
去る2月には世界的に権威のあるイギリスの医学雑誌The Lancetに、「超音波検査を上乗せしたグループでは、マンモグラフィのみのグループに比べて、進行乳がんが見つかる割合が約17%低くなっていることがわかった。これにより、乳がん検診でマンモグラフィに加えて超音波検査を行うことは進行乳がんの発生(累積罹患)を減らす可能性があることがわかった」とする論文が掲載された。
だがこの結果は、ストレートに死亡率減少効果を証明するものではないので、引き続きの調査が必要ということになっている。
また、超音波検査のオペレータごとのバラツキをなくし、信頼できる技師/医師を増やすために、日本乳がん検診精度管理中央機構では超音波技術講習や試験を行ったり、明石教授が理事長を務める「日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)」においても「乳房超音波スタートアップ講習会」を開催している。
「日本でも超音波検査の死亡率減少効果の研究と精度の向上を図る対策は進んでいるので、公的検診が40歳代女性に対してマンモグラフィと超音波の2大検査体制になる日は近いのではないでしょうか」
早期発見なら10年後の生存率は90%以上
とはいえ、日本の場合は、乳房タイプの告知や検査法の選択以前に、検診受診率の低さが問題視されている。
「欧米の7~8割に比べ、日本における乳がん検診の受診率は47.4%(2022年)。乳がんの患者数は年々増えていて、今は9人に1人がかかるといわれています。最新のデータ(※編註)では10万3424人(2023年)が罹患し、1万5869人(2024年)が亡くなりました」
※編註 罹患者数=国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)、死者数=同「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)

