「選ばれる側」から「選ぶ側」に
ニューバランスのCMO(最高マーケティング責任者)であるクリス・デイビス氏は、選手との関係を「スポンサーシップ」ではなく「パートナーシップ」と呼ぶ。
従来のスポンサー契約で重視されるのは、ロゴの露出回数やウェアの着用義務だ。契約金に見合うリターンを、いかに早く回収するかが勝負とされる。だが、ニューバランスの発想は根本から違う。選手自らが商品開発や戦略づくりに加わり、ブランドを共に育てていくことで、選手側の深いコミットメントを得る。
ニューバランス幹部のクリス・デイビス氏は米ビジネス誌のファスト・カンパニーの取材に対し、「主要アスリートが関わるすべての活動を共同で進めている。ストーリーテリングも、製品開発も、ビジネス戦略も一緒に作り上げる」と語る。選手の影響力が広がれば、ブランドとの結びつきも自ずと深まる。互いの利害がかみ合う設計だ。
こうした姿勢は、企業に一方的にコントロールされることなく自らのブランド力を育てていきたい選手側にとって、またとない機会を生む。かつてはニューバランスのほうから選手に売り込みをかけていたが、いまは立場が逆転。寄せられるオファーの約99%を断っているほどだと同記事は伝えている。
契約選手が少ないからできること
象徴的なエピソードが、ナイキとの対比だ。米スポーツ専門チャンネルのESPNは2012年、MLBのカーティス・グランダーソン選手がナイキからニューバランスに移った経緯を報じている。
ナイキ時代、グランダーソン選手は特別仕様のシューズを約束されたが、待てど暮らせど実現しなかった。サイズすら合わないスパイクが届くこともあったという。グランダーソン選手としては、数ある選手の1人として扱われているように感じたことだろう。
ニューバランスに移ると、扱いは一変した。ジャッキー・ロビンソン・デー(人種の壁を破ったMLBの先駆者を称える記念日)の記念シューズが作られ、自身の財団ロゴを入れたシューズまで用意された。
パートナーシップを結ぶ相手先の選手が少数だからこそ、一人ひとりに手をかけられる。ニューバランスのキャシディ氏は2019年、ヤフー!ファイナンスの取材に対し、「他とは一線を画す存在で、独立心があり、自分自身の未来予想図に沿って動きたいと思うアスリートを求めている」と述べ、契約選手数を最大5〜10人にとどめる方針を明かしている。

