たとえば「元気ないじゃないか」といわれると、「元気ないと思われているんだ……」と内にこもっていってしまう。相手に悪気がなくても、病気なので曲解しちゃうんですね。
逆に最近はうつの人に「頑張って」といってはいけないと広まっていますが、いわれた人が必ず傷つくわけではありません。いろんな状況があるなかで、その言葉が人を傷つける場合があるということです。その意味では、言葉の選び方が難しいのは確かですが。
相手の状況を全部把握しているわけではないのですから安易に引っかかるようなことをしゃべってはいけません。
芝居をやっていることもあって言葉が本当に重要だと僕は思います。言葉の上には感情がのっています。神経質になりすぎてもよくないですが、心の中に相手への思いやりを持って話すことが大切です。そんな気持ちがあれば傷つけても「ちょっと言いすぎたかな。ごめんね」とフォローできるでしょう。
うつは誰でもなる可能性があります。奥さんとは毎日10分でも目を見つめ合って、会話を持つ努力をしたほうがいいと思います。それでおかしな感じがあれば、「どうしたの?」といってあげる優しさが必要です。
とはいえ、普通に暮らしていた伴侶が急にうつを患っても、まずわからないでしょう。僕の場合、妻がSOSを出してくれたおかげで彼女を救うことができました。彼女は自分がSOSを出せば、僕が受け取ると思ってくれたんだと思います。だから、夫婦に信頼関係があることが大事なんでしょうね。
僕たちは青春時代を芝居で共有していたので尽きることなく話せる。会話の多い夫婦なんですよ。話題はなんでもいいから、お茶でも飲みながら2人で話をしましょう。1つの時間を2人で共有し合うことが、夫婦の信頼関係をつくるには一番だと思います。
1953年、東京都生まれ。世田谷学園卒業後、劇団「ザ・スーパーカムパニイ」に所属。73年初舞台。つかこうへい事務所を経て、83年フリーに。以後活動の場を舞台、TV、映画等と広げ、現在に至る。著書に『Wうつ』がある。