性格のせいというより「思考グセ」の問題

誤解のないように繰り返し言っておきたいのは、「不適応思考」は精神科の患者だけのものではないということです。

不適応思考は、割合や程度の違いこそあれ、一般の人にも多く見られるごくありふれた思考パターンです。また、健康時は正常な思考パターンだが、強いストレスがかかったり心を病んだりすると不適応思考のパターンに変化する、というようなものでもありません。

スキーマと同じように、おもに学校教育が、不適応思考を刷り込んできます。学校教育では、決められた答えを早く出すことが求められるため、ある種の固定した思考パターンを身につけさせられ、その思考パターンを疑う機会も用意されません。

こうした思考パターン、すなわち「思考のクセ」があっても、日常生活がスムーズに回っているうちは困らないのです。とくに日本人の場合、多くの人が不適応思考を持っているため、「そんなの普通」と思われる思考パターンとも言えます。

ところが、いざ、うつ状態になったり、ブラック企業でいじめられたり、といった状況に陥ると、とたんに不適応思考が問題になってくるのです。

座り込んで額に手を当てる男性
写真=iStock.com/Vichakorn
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たとえば、病気になったらパフォーマンスが落ちるのは当然なのに、不適応思考の一つである「完璧主義」が作動すると、完璧にやれない自分に落伍者のレッテルを貼ったり、もう立ち直れないと落ち込んだりします。

強いストレスを受けているというときに、「男なら我慢しなければならない」という「こうあるべき思考」の不適応思考パターンにはまりこんでいると、ストレスから逃げ出すこともできません。

精神科医の立場からは、うつ病を防止する意味でも、今のうちから不適応思考を修正しておくことをおすすめします。

「決めつけ」をしないではいられない人たち

ここからは、不適応思考のなかで代表的な「二分割思考」を見ていきましょう。

【二分割思考】「曖昧な状態は、気持ちが悪い。白か黒か決めたい」

たとえば「二分割思考」は、不適応思考のなかでもとくに代表的なものです。

二分割思考とは、なんでも白黒はっきりつけようとする考えのこと。正しいか間違ってるか、イエスかノーか、敵か味方か、善か悪か、などです。曖昧な状態が不安であり、どちらか一方に決めつけないではいられません。

二分割思考が不適応だとされるのは、世の中簡単に白黒つけられないことばかりだから。グレーゾーンのほうが、ずっと多いからです。敵と味方にしてもはっきりつけられるものではありません。

「あいつとは30%ぐらい意見が合わないけど、70%は嫌いじゃないんだよな」などと、グレーな範疇はんちゅうにあるのが普通です。

養老孟司先生はベストセラー『バカの壁』(新潮新書、2003年)で、林野庁と環境省の懇談会に出席したとき、そこで出された答申の書き出しに「CO2増加による地球温暖化によって次のようなことが起こる」となっていたので、二酸化炭素が原因で地球温暖化しているという理論はまだそう断言はできないので、「これは“CO2増加によると推測される”という風に書き直してください」と注文をつけたそうです。

すると、たちまち官僚から反論があった、と書いています。官僚というのは、「決めつけ」をしないではいられない種類の人間なのでしょう。