最高益更新、構造改革の真っただ中、イノベーションの途上……。それぞれの局面で求められているのはどのようなリーダーなのか。
神戸製鋼所は2017年度をめどに神戸製鉄所の高炉を休止し、加古川製鉄所に集約する決定を行った。高炉は製鉄会社の象徴。阪神淡路大震災による損傷を乗り越え、「復興のシンボル」とされた高炉の休止を決断したのは、製鉄所の現場経験が長い川崎博也社長だ。業界再編とは距離を置く独立路線を続けてきた神戸製鋼が描く勝ち残り戦略とは。
――4基の高炉のうち、1基を休止。苦渋の決断だったのでは。
【川崎】鋼材事業は、不景気で3~4年マイナス収益が続き、高炉休止を考え始めると景気が好転し、1年間フル生産して取り返すという繰り返しだった。ただ、昨年は最悪で、今はアベノミクスで若干持ち直しているが、はたして2、3年先に好転するか。鋼材の内需は製造業の海外移転や人口減少により縮小が必至だ。成長市場の新興国や北米では現地調達が増える。中国や韓国のメーカーも自動車用高張力鋼板をつくれるほど実力が高まり、世界的にも供給力が過剰になっている。もはや、景気循環型の構図は成り立たない。
神戸製鋼が今後も鋼材事業を核に、鉄・銅・アルミの素材事業、建設機械などの機械事業を2本柱とする複合経営を続けるにはどうするか。まずは高炉を集約して鋼材事業のコスト競争力を高める。そのうえで得意な品種で利益を確保し、機械系を拡大し、電力供給事業を第3の柱に育てる。それが勝ち残り戦略だ。
震災後、現場の不眠不休の働きで2カ月後に奇跡の復活を遂げた高炉を止めることについては悩んだ。ただ、私には従業員、その家族、関連会社の人々に幸せになってもらう責任がある。「川崎が止めた」といわれようと、今しかないと決断した。