「幼稚」とは逆の反応
まさに絶賛である。さらに序文は批評家ポール・エルマー・モアが1903年2月の『アトランティック・マンスリー誌』に寄せた八雲への批評を引用している。
モアは、八雲の魔法の秘密は「三つの道の出会い」にあるとしている。インドの宗教的精神(とりわけ仏教)が歴史的に日本の美意識に接ぎ木され、そこにヘルンが西洋科学の解釈精神を持ち込む。
この3つの伝統が彼の特異な共感によって融合し「文学にこれまで存在しなかった心理的感覚を導入した」とモアは評した。序文によれば、この評論は八雲自身が感謝の言葉を書き送ったほど気に入ったものだったという。
[Lafcadio Hearn, Kwaidan: Stories and Studies of Strange Things (Boston and New York: Houghton, Mifflin and Company, 1904), University of California Libraries, Internet Archive.]
実際に当時の英語圏の新聞を確認すると、「幼稚」とはまったく逆の反応が見えてくる。まず刊行前の1904年2月3日、ニューヨークの日刊紙「ザ・サン」は短信でこう伝えている。
ラフカディオ・ヘルンの新著『怪談』は、日本の幽霊、妖精、精霊を扱っている。ヘルンは日本では小泉八雲として知られているが、東京から姿を消しており、行方は不明だ。しかし彼はしばしば隠遁するため、心配はされていない。
(“Lafcadio Hearn's New Book”, The Sun, New York, February 3, 1904, Chronicling America, Library of Congress.)
(*筆者による日本語訳)
「ヘルンの本は魅力的」と絶賛
この時点はまだ日露戦争開戦(2月8日)の5日前であり、怪談の刊行(4月)より2カ月早い。記事は短いながらも、ヘルンが行方不明でも「またいつものこと」と受け止められるほど当時の英語圏で著名な存在だったことを示している。
続いて刊行直後の4月11日、メイン州ポートランドの日刊紙「ポートランド・デイリー・プレス」は書評を掲載している。
ホートン・ミフリン社は、ラフカディオ・ヘルンによる日本と日本人についての驚くべき物語集を刊行した。読者はすでに彼の芸術における稀な技巧と、この上なく繊細な文学的職人技を期待することを学んでいる――しかも彼は同時に、日本を心から知っている。
(“Kwaidan: Stories and Studies of Strange Things”, The Portland Daily Press, Portland, Me., April 11, 1904, Chronicling America, Library of Congress.)
(*筆者による日本語訳)
さらに同記事はこう続ける。
(*筆者による日本語訳)
「rare skill(稀な技巧)」「most delicate literary workmanship(この上なく繊細な文学的職人技)」「unique(唯一無二)」「charming(魅力的)」
これは、幼稚どころではない。絶賛の嵐である。

