ところで、「我慢のしすぎ」は、脳によくないことはご存じだろうか。まず何よりも、ストレスが溜まる。ストレスが溜まると、ホルモンの分泌などを通して体の調子を整える脳の回路が不調になり、健康に悪影響が及ぶ。
さらに見逃せないのが、脳のパフォーマンスの低下である。脳の働きが最高になるのは、集中しているがリラックスしている「フロー」の状態。アスリートが世界新記録を出すのは、フロー状態のとき。ビジネスパーソンが、「自分新記録」とでも言うべき高度な動きをするのも、フロー状態においてである。
フローに入るためには、ある程度自分を「追い込む」必要がある。ところが、ストレスが溜まっていると、この「追い込み」ができない。いろいろと余計な事を考えてしまって、集中とリラックスのフローを実現できないのだ。
日本中の企業で、半沢直樹の活躍に喝采する「我慢する社員」が多いということは、それだけ、仕事でフローに入れない人が多いということを意味する。つまり、日本経済の生産性は低下している。我慢のストレスは、脳がフローに入ることを邪魔するのだ。
できることならば、現実においても、あまり我慢しないで、時には「ちゃぶ台返し」をしたほうがよい。そのほうが、生産性が上がって、本人も会社もハッピーだ。
それがすぐには無理だというのならば、ドラマ「半沢直樹」の「倍返し」で、ストレスからの解放の疑似体験をするのもいいだろう。フィクションは、現実の1つのシミュレーション。ものの見方を変えることで、生きる空気が少しだけ自由になる。
(日曜劇場「半沢直樹」=写真)