「予算3倍増→出生数3割減」の皮肉
実は、10年くらい前までは、この大河はせいぜい小川程度のものでした。実際、年収300万円台でも若者は十分に結婚できていたわけです。にもかかわらず、前述した通り、今では700万円にまでハードルが跳ね上がってしまったのはなぜでしょうか。
それこそ、対岸でのサービスを充実させればさせるほど、その予算を作るために川幅を増やしてしまったようなものだからです。税・社保料などの負担が川幅を増していきます。4月からの子育て支援金もまさに川幅を増やすことになります。
国の子育て支援予算は2007年対比で3倍増の11兆円超にも増大しています。ところが、児童手当など実際に世帯に渡る給付は2兆円程度で増えてはいません。増えているのは就学前児童のための福祉サービスですが、皮肉にもこれを増やすほどに出生数は減少。予算は3倍増で出生数3割減です。そして、その間、国民負担率も増加しています。
子育て支援を否定するものではありませんし、それはそれでやるべきです。しかし、それだけでは効果はありません。投下した費用に対する効果検証もなされないまま、前例踏襲でただ予算を増やすだけの政策は、結局負担を増やしただけで、手取りは減り、さらに子育てにはコストがかかるという意識までも強化して、子育て世帯でさえ「もう一人」と思えなくさせています。子どものいる家庭では世帯年収700万でも苦しいことでしょう。
すべてが、結婚と出産を困難にしたとも言えるのではないでしょうか。実際、結婚できる年収、子どもを持てる年収があがってしまっているわけですから。
本当に必要なのは「将来の親育て」
要するに、これまでの少子化対策のやり方では、未既婚関係なく結婚と出産の経済的ハードルを増し、意識のインフレを加速させただけで誰も得をしていません。特に、向こう岸に渡りたくても渡れないという「若い中間層の経済問題」については、今まで認識すらされていませんでした。子育て支援も大事ですが、これから結婚・出産しようとする「将来の親育て」をないがしろにしては、結局少子化は進むだけです。
必要なのは、最初の意図と反して大きくなりすぎた川幅を元に戻す(税・社保料などの負担軽減で手取りを増やす)に加え、それだけでは不十分で、「将来の親」となるべき多くの中間層の若者が置かれている環境の視点に立つことが肝要です。そこの岸辺に立って、必要とあらば、小舟を出す、橋をかけるという具体的なアクションによって、彼らの安心を作ることでしょう。
子育て支援という対岸でのから騒ぎばかりやっているうちに、その支援すべき子どもたちが生まれてこなくなるとすれば、それこそ本末転倒です。そして「将来の親育て」がないままなら、今生まれた子の将来もまた辛いものになることになります。

