八雲、本当は「化け物屋敷」にひかれていた

しかし、実は八雲は、これよりも気に入った家があった。それは、同じく牛込にある、かつては旗本が住んでいたであろう古い家だった。この家を見に行った時、夫婦の反応は正反対だった。

門を入るとすぐに、もう薄気味の悪いような変な家でした。ヘルンは「面白いの家です」といって気に入りましたが、私にはどうもよくない家だと思われまして、止めることにいたしましたが、後で聞きますと、化け物屋敷で、家賃は段々と安くなって、とうとうこわされたとかいうことでした。この話をいたしますと、ヘルンは「ああ、ですから何故、あの家に住みませんでしたか。あの家面白いの家と私思いました」と申しました。

(小泉節子、小泉一雄『小泉八雲』恒文社、1976年)

まったく、お互いを理解しきっている夫婦のハズなのに、突然かみ合わないのが面白いところ。

後で化け物屋敷と知った時、普通の夫なら「そうか、止めてくれて助かった」と殊勝になるところだ。ところが、八雲は悔しがっている。本物の化け物屋敷だったと知って、むしろテンションが上がっているのである。