父親は残業手当を求め、母親は休暇を求める

ハーバード大学の経済学者のヴァレンティン・バロトヌイとナタリア・エマニュエルの二人は、マサチューセッツ湾交通局(MBTA:Massachusetts Bay Transportation Authority)で働く、バスと電車の運転手について研究をした。

この研究においても有力な証拠が提示された。運転手のうち30%を女性が占めているが、男性の同僚が稼ぐ1ドルを女性の給与に換算すると0.89ドルに相当するという。同じ雇用主のもとで同じ仕事をしている男性と女性に注目することで、バロトヌイとエマニュエルは賃金の違いに寄与する様々な要因を丹念に調べて取り出すことができた。

彼らが結論づけたところによると、給与格差は「職場では同じ選択肢を有している一方で、女性と男性は異なる選択をしている事実によって完全に説明し尽くせる」という。男性は、(割増給与が支払われる)残業を女性に比べて2倍も引き受けている傾向があった――それが急な残業依頼だったとしても。

また男性は無給休暇を女性に比べてほとんど取得しない、などなど。子どもがいる電車の運転手をみると、その格差はより広がっている。父親はさらに残業手当を求めており、他方で母親はより多くの休暇を求めていた。

ハーバード卒女性が直面する「障壁」

ある意味、経済階層の最上位にいる女性をみてみることがもっとも理に適っているだろう。なぜなら、彼女たちはあらゆる選択肢をもっているし、並外れた経済力をもっているからだ。

ハーバード大学の専門職や大学院の学位を取得した女性を考えてみたい。彼女たちは間違いなく世界中でもっともエリートな教育を受けた集団に属している。卒業から15年経つと、ハーバード卒のエリート女性たちのうちわずか半分しかフルタイムで働いていない。一体全体、なにが起きたのだろうか?

ハーバード大学卒のエリート女性を詳細に調査したクラウディア・ゴールディンによると、「女性たちは、多くの障害に直面し、数え切れないほどの自由を手にいれた後に、つねにそこにある障壁がはっきりとみえてきたのだ。それは、時間的な制約である。子どもの世話には時間が必要であり、同様にキャリアの追求にも時間が必要だ」。

シカゴ大学のMBA出身者を例にとってもよいだろう。ビジネススクール卒業後すぐ、男性のクラスメイトに比べて女性は12%ほど給与が低かった。その差は、男女それぞれが選んだ仕事の種類によっておおむね説明できる。

13年経過すると、その差は急激に拡大し、約38%になる。しかし、女性のMBA出身者のうち、ある一つのサブグループは男性にくらべて遅れをとっていなかった。もはや説明するまでもないだろう。そのサブグループは、子どもをもたない女性たちだ。