もう一度、同じ人生をやりたいか
【養老】いまは生きるということを考えるだけの暇ができたということですね。
【楳図】下手な考え、休むに似たり。
【養老】暇なんかなくて必死になって生きるというのが、いちばん生きているってことですよね。
【楳図】昔の農民が、朝起きてから夜寝るまで働いてストンと寝てしまう。でも、それだけだとちょっとつまんないし。
【養老】いや、それで面白いということになれば、それがいちばんいい。
【楳図】それで面白ければ天国ですね。
【養老】それで思い出すのが、雷の研究で有名なフランクリンですよ。あの人が死ぬとき「人生をもう一回やるとしたら何をしますか」と聞かれて、「もういっぺん同じようにやる」と答えた。楽天的で面白い人生を送ったんでしょうね。
【楳図】面白いことをやらないといけませんねえ。
【養老】人のことは考えないで、我さえ良からば……これでいくのがいちばん。
本当に「好きなことだけ」やるとエライことに…
【楳図】じゃあ、先生はいいですね。子供のときから、そんなことして何の役に立つのかと言われることばかりやってきているから(笑)。
【養老】でもそれ、相当頑張ってやっているからねえ。やっぱりそう言われるとだんだんひねくれてくる(笑)。
【楳図】ひねくれてはいけませんねえ、はい(笑)。
【養老】自分が本当に好きでやっていることが、世の中ではあまり通用しない、つまり認めてくれないとなると、やっぱり相当抑制するんです。本当に自分の好きなようにやってしまったら、これはけっこうエライことになる。
【楳図】でも、そういう体験や研究が本になって出てきて、皆さんがそれを読んでくれたら、そのときはいままでの反動というか、オツリがいっぺんにバーッと戻ってくるということがありますでしょう?
【養老】ぼく、そういうの全然ないんですよ。



